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市況レポート「テディベアのマーケットアイ」4月28日号

好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。

※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

⒈金融経済情勢                       ※次号は5月12日の予定です

トランプ政権の政策
・トランプ政権の関税政策は、今後、中国を囲い込むことを目的としたものに絞り込まれてくると予想している。ベッセント財務長官は世銀やIMFなどの世界の金融システムを米国主導で再構築し、中国の不公正な貿易慣行を根本的に是正し、囲い込むことを目指している。中国製品から入れ替えるには相当の時間がかかるとともに、コストも中国から輸入するよりも50〜60%程度上昇するとみられている。
・関税政策の経済への影響は今年後半から本格化する。今後の製品やサービスへの価格転嫁は避けられず、すでに、先行き不透明感から企業の投資も手控えられ、企業活動は停滞し始めている。今まで米国経済をリードしてきた IT 市場の動きも鈍っている。高関税によって製造業の国内回帰を推し進めようとしているが、特に半導体などの供給網は世界中に分散していて、コスト面も含め全て米国に戻すのはそもそも不可能と言われている。
IMF は2025年の世界の経済成長率を2.8%と0.5%引き下げた。2.8%という水準は IT バブル崩壊やリーマンショック、コロナショックで世界経済の成長がマイナスに落ち込んだ直前の数字で、今年後半から来年にかけて米国はリセッションに陥る可能性が高くなっている。失われつつある。

米国の信認
・米国の保護主義的な政策により、各国は経済的にも軍事的にも自立を求められ、今までのようなペースで米国債への投資を続けることを再考し始めている。米国も経常収支や財政収支の赤字を穴埋めする資金の調達に苦労することになる。サプライチェーンを中国から国内や代替国の生産にシフトさせると価格は上がり生産性は低下することになるが、大規模な財政支援は期待できないので、米国は今後、その経済状況に見合った低成長と高いインフレ率というスタグフレーション的な環境を受け入れざるを得なくなる。

日銀の金融政策
債券の市場関係者の間では、トランプ関税は内外の景気減速を通じて物価を下振れさせるため、日銀はしばらく利上げはできない、という見方が多い。米国も為替のドル安への誘導もインフレ懸念から債券の利回りが上昇するリスクがあって取り組みにくいと思われているが、ドル安が関税よりも効果的とトランプ大統領が判断した時には、FRBの大幅な利下げに合わせて日銀に利上げを要求し、日米協調介入を実施する可能性は否定できない。

2.市場動向

投資戦略
4月に可決された米国上下院の減税の中身は下院案は2.8兆ドル、上院案で5.8兆ドルと、トランプ政権案の7.8兆ドルと大きな乖離がある。今後、政権内で項目の取捨選択が必要になる。ブラックマンデーも国債価格の下落から始まった。歴史的に危機は債券市場から始まると言われている。高金利下で債務の返済が続けられるかという恐れを生じさせかねない。関税、減税の規模や金融政策の進め方を間違えると危機的な状況に陥るリスクがある。
ドル資産はアンダーウェイトにして、欧州や日本をオーバーウェイトにする。

米国株
S&P500指数は4月8の安値4983から10.8%上昇したが、これで下落相場は終了したとする見方は少ない。相互関税は90日間停止したが、現在の実質的な関税率は約23%と高水準でその影響は大きい。
米国の1〜3月期決算の発表がピークを迎え、関税の影響の大きい消費関連や化学、医薬品関連の企業の業績予想の下方修正や予想の撤回が増えている。現在の株式市場はPERは21倍と割高になっている。今後、関税に伴う前倒し需要が剥落し、雇用が減って消費が減少すると企業業績が悪化し、株価が下落する可能性が高い。

日本株
日本株は、2日からの下げをほぼ埋めて、日経平均は35700円まで上昇した。1月以降の株価の動きを円換算でみると、日本株の下落率が米国株やアジア MSCI と比べても一番少ない。日本企業が需要に応じて海外生産を拡大した結果、ドル円に対する感応度は10年単位で大幅に低下して来ている。アジア通貨危機やリーマンショックなど、過去の大きな円高局面では MSCI ジャパン指数は MSCI オールカントリーワールド指数を平均24%オーバーパフォームしてきた。ドル建てでみた日本株の価値は高まるため海外の投資家は投資しやすい。米国株が大きく下落すると日本株も下落は避けられないが、米国との関税交渉で先行する日本への関心は高い。

為替相場
25日の日米財務相会談で米国サイドから為替相場の一定の水準についての言及がなかったことで安心感が広がりドルが買い戻され円相場は143円台まで下落した。米財務省は25日に、両者は為替に関する問題について緊密な協議を続けると公表するなど、今後為替に圧力がかかってくる可能性が高い。関税政策による景気の減速懸念から6月のFOMCで0.25%の利下げ確率は25日現在6割まで高まっている。トランプ政権の関税交渉の行方を不安視したドル安が加速する恐れがある。引き続き6月にかけて130円前半まで円高が進むと予想している。
                                          以上


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