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市況レポート「テディベアのマーケットアイ」5月12日号

好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。

※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

1.金融経済事情

◾️トランプ政権の関税政策

     米英政府は貿易協定を結ぶことに合意した。英国との交渉結果を見ると自動車などの分野別関税でも交渉の余地があることが明らかになったが、大幅な対米黒字の日本と分野別関税交渉をすることに米国は難色を示しており、日本との協議は難航が予想される。

     今回の合意で英国に対する米国の実効税率は約11%になると推定されるが、24年までの1%からは大幅に上昇していて高関税が課される状況に変わりはない。

     10、11日で米中の貿易をめぐる協議が行われるが、緊張の緩和に向かえるか注目されている。米国は半導体や鉄鋼、医薬品などの戦略分野には厳しい姿勢で望むことが予想される。相互関税については60%程度に引き下げられる可能性が高いと思われるが、60%に引き下げられたとしても、米国の消費への影響は大きい。

    ◾️FRBの金融政策

     関税の影響はまだ何も表れていない。関税の発動が物価統計に顕在化するには時間がかかる。企業はまず在庫の積み増しやコスト削減で対応し、政策の動向を見ながら夏場以降値上げに踏み切ると思われる。FRBは、関税に直接関係のない分野にも値上げが広がるのか、消費者のインフレ期待まで上昇するのか注意深くみていく必要があり、今後の政策判断は難しく不確実性が高い。

     そもそも政策判断は本来不確実性が高いもので、金融政策が常に予見可能で、金融や経済の混乱に対し常にセーフティーネットを提供し続けると、金融市場で過度なレバレッジをかけたリスク資産が積み上がりやすくなる。

     金融政策の変更には労働市場の軟化を示す根拠が必要で、データのタイムラグを考慮するとFRBが利下げの判断ができる根拠は夏までに集まらない可能性が高く、対応が遅れる恐れがある。

    ◾️シャドーバンキングのリスク

     トランプ政権はリベラル指向とみなす有名大学へ免税資格の剥奪などの圧力を強めている。日経新聞によると、ハーバード大学やイェール大学などは助成金の凍結などのリスクに備えてPEファンドの流通市場での売却を検討しているという。

     今後トランプ政権の関税政策の影響でファンドの投資先の業績が悪化で、ファンドの投資家が投資により慎重になるリスクがある。

     プライベートクレジットについても、一部の投資家は米経済が悪化するリスクを見越して持分の売却を進めていて、ファンドの評価も下落してきている。評価の下落は信用の質の低下によるものではないが、不安を感じる投資家の売却が増えると流動性が逼迫する恐れがある。

     プライベートクレジット市場は、ここ数年で約230兆円まで急速に拡大してきた。相対的な規制の緩さから景気が悪化した時の質が懸念される。


    2.市場動向

    ◾️米国株式市場

     市場は関税によってリセッションにならないと予想する一方、利下げ予想している。現在の相場は都合のいい材料を織り込みに行く典型的なリリーフラリーといえる。8日に英国との貿易交渉で合意、中国当局者との会談も週末に予定されているにもかかわらず、ダウ工業30種平均は0.2%安、S&P500指数は0.5%安で引けるなど好材料の多くは既に市場に反映されている。

    ◾️日本株

     9日の東京株式市場で日経平均株価は約1ヶ月半ぶりに37000円台を回復した。米英両政府の貿易協定の締結合意や週末には米中両国の貿易協議が予定されるなど、関税の応酬で世界不況に陥るという不安感が後退した。大量の自社株買いも相場の押し上げに貢献した。

      現在の関税交渉は日中共に米国との決着は見通しにくい。株価の底入れは悪材料が株価に織り込まれてから始まるので、株価はもう一度下落する可能性が高い。

     年初来の推移を見ると、東証グロース市場は日経平均に比べて堅調で、関税の影響を受けにくい銘柄が買われている。

    ◾️日本国債

     今後、トランプ政権の自国本位の関税政策の影響で、経済・金融ショックが起きた時には、大規模な対外純債権国である日本の投資家はすぐに海外から日本に戻り、円高が進むとともに長期、超長期の国債利回りが大幅に低下することが期待できる。

     9日現在、米国の30年国債4.389%、日本の30年国債が2.91%とその差は2%を切っている。為替リスクを考えると、日本の30年国債には十分投資妙味があると思われる。

    ◾️為替市場

     台湾ドルが2日と5日の2営業日で10%上昇した。米国との関税交渉で台湾当局が通貨の切り上げに合意したとの憶測によるもので、台湾の生保が慌てて急遽ヘッジを行った。

     海外の投資家は、日本も含めてヘッジなしで米国資産を多く保有している。米国へ資産が過度に集中していて、為替もヘッジが不足した状態にある。海外の投資家はトランプ政権の予測不可能な政策に不安を感じていて、米国からの資金シフトによりドル安の要因になる。
                                             以上

                                                              

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