News

お知らせ

市況レポート「テディベアのマーケットアイ」5月19日号

好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。

※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

1.金融経済情勢
日米関税交渉最後は円高容認か
米国は日本に対し自動車・自動車部品と鉄鋼・アルミに25%の追加関税と相
互関税として10%の基本税率を課すとともに、執行を90日猶予している14%
の上乗せ税率を設定している。日本は全ての追加関税を撤廃してゼロにする
ように求めているが、このままでは交渉の進展は期待できない。自動車・自動
車部品の輸出は年間約20兆円で、日本としては自動車・自動車部品、鉄鋼・
アルミも含めた関税の大幅引き下げは譲れない点だが、ハードルは相当高
い。約10兆円の大幅な対日貿易赤字を考えると、全ての関税の税率を10%
の基本税率まで引き下げる為には、為替の円高について日本が容認する可
能性が高い。日銀の利上げは参議院選挙や日米関税交渉が決着した9月以
降になるという予想が多いが、日本の政策金利は低すぎ、いつ利上げしても
おかしくはない。日米の関税交渉が決着後に、為替のドル高修正に合わせて
日銀が利上げを行う可能性も否定できない。
円高は輸出企業にはマイナスだが、輸入コストが低下することで原材料の
輸入の多い中小企業や消費にはメリットがある。企業の海外への進出や海外
の企業の買収もしやすくなる。インフレが沈静化し債券市場も安定するなど、
円高はプラス効果も大きい。
米国経済の現状と金融システムへの影響
米国の実効税率は13%に下がったがそれでも今までの2%強よりもはるかに
高い水準にある。ウォルマートは25年2〜4月期決算発表時に関税の影響を
受けた商品が店頭に並ぶ5月下旬から値上げする方針を示すなど、今後企
業の関税のコストを転嫁する値上げが増加し、消費者心理が悪化するリスク
がある。
米中の関税交渉はトランプ大統領が折れる形で大幅に引き下げられたが、
今後90日間で方向性を示せるかが焦点になる。お互い国益とメンツがかかっ
ているだけに妥協は難しく、いずれにしても合意には時間がかかり、その間両
国間の経済活動は停滞を余儀なくされる。
気になるの2700兆円まで拡大した家計債務で、負債全体の30日以上の
延滞率が4.89%と10年ぶりの高水準に上昇している。消費や企業業績の先
行きが懸念される。2兆ドルに及ぶプライベートクレジットファンドの価格も下
落し投資家心理が悪化し始めている。S&Pグローバルの調べではファンドの
出資している企業の倒産は24年過去最高を記録している。プライベートエクィ
ティー市場も景気の先行き不透明感から低迷している。

2.市場動向米国市場
関税に関するヘッドラインだけで株価が上がり続けるのは難しい。現在の米国株式市場は機関投資家のショートカバーと個人の旺盛な買いに支えられている。4月の最終週だけで、レバ型ETFに616億ドルの買いが入り株式市場を支えた。個人投資家が購入するレバ型ETFは順張り的な売買を行うため相場の変動を増幅し、相場を不安定にすることがある。昨年の8月5日の日本平均の4451円の急落も引けにかけてETFの機械的な売りが出て下げを加速した。
過去株式市場の下落は債券の利回りの上昇がきっかけになることが多い。米国政府は、年間2兆ドルの財政赤字を計上していて、恐らく米国経済はこれほど大きな赤字を維持できない。ムーディーズは米国債をAa1に引き下げ、米国10年債は一時4.49%まで上昇した。国債のさらなる利回りの上昇は株式市場などのリスク資産に逆風になる。4.5%は重要な節目で、ここを超えると株式から債券へのシフトが始まり株式のリターンが低下する。4.7%を超えると景気の後退を織り込み始め、株式にはかなりのダメージになる。
トランプ大統領の主導する減税法案は、共和党の一部の議員がメディケイドのさらなる削減など歳出の削減を求めて反対に回り、否決された。減税法案が規模が縮小されずにそのまま通ると米国債の利回りは大幅に上昇する。メディケイドなど低所得層向けの医療費の削減は国民の反発が予想される。トランプ大統領としては厳しい選択を迫られる。日本株式市場
今後は日米関税交渉の行方や米国の景気に左右される展開が予想される。関税交渉では自動車への25%の関税を回避できるかが焦点になる。為替について何らかの合意があると、為替の円高に連動して一時的に大きく下落する可能性が高い。ただし為替の日本経済への影響は前述したようにニュートラルと考えており、関税率が下がれば株価は落ち着いてくると思われる。8月にかけては米国の景気の動向や減税法案の行方、それに関連した債務上限の引き上げなどが問題になる。スムーズに進まないようだと、日米共に株価が大きく下落する可能性が高い。日本国債
需給の悪化から日本の超長期国債の利回りが大幅に上昇している。超長期債は変動が大きく、積極的に買いにくい状況が続いている。30年債の3%は十分投資妙味があると思われるが、今後米国の景気減速や金融システムトラブルなどが起きると、為替の円高とともに金利が低下する場面も想定される。リスクがあるとすれは参議院選挙で、選挙に向けて消費税の一部引き上げが活発に議論されているが、万一引き下げられるようなことになると、英国のトラスショックのようなトリプル安になる恐れがある。
                                         以上

この記事をシェアする

私たちは、資産運用ビジネスを支援しています。

お問い合わせはこちら