News
お知らせ
市況レポート「テディベアのマーケットアイ」5月26日号
好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。
※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

1.金融経済情勢 ※次号は6月9日の予定です
■日米欧の国債の利回りの上昇
日米欧で特に期間の長い超長期の国債の利回りが上昇している。
米国債券市場では、利下げ期待があるにもかかわらず30年国債利回りが一時5.1%近くまで上昇した。トランプ政権の減税延長による大幅な財政悪化が嫌気されている。トランプ政権への不信感からの米国債売りも懸念されている。欧州でも貿易戦争が供給混乱と物価高につながる恐れから利下げペースの鈍化が見込まれている。
日本でも、日銀が当面利上げを行わないにもかかわらず、超長期債の利回りが急上昇している。今後インフレが加速するリスクが意識される。夏の参院選控えた消費税減税を求める声や国防費の増額議論など財政悪化への警戒感も強まっている。
◾️米国経済
トランプ政権の関税政策は米国経済にスタグフレーションを引き起こす可能性が懸念されているが、今までは米国の企業と家計は健全な状態にあり不況に十分耐えられるとみられていた。関税や移民政策による混乱は、その後の財政支出や規制緩和で調整すると予想していたが、あらゆる政策が順序立てされることなく一度に起きたことが、金融市場のボラティリティーを高める結果になってしまった。今後、企業の値上げによる関税コストを転嫁するなど関税の影響が本格化しインフレが高まり消費が減少し景気が悪化する可能性が高い。DOGEによる連邦政府の労働者とプログラムの削減も、州や地方政府にも大きな負担を強いる事になり雇用を悪化させる。
◾️レパトリに注意
米国の国債や株式市場及び為替相場は日本の投資家の投資により膨らんでおり、日本の国債の利回りの上昇により日本の投資家が米国資産から資金を引き上げて国内に戻すことになれば、今までのキャリートレードの急激なアンワインドが起きるリスクを意識しておく必要がある。
◾️ドルの信認の低下
22日の日米財務省会談で米国から円安是正要求がなかったにもかかわらず、為替は円高方向へ水準を切り上げた。米国の関税政策への信認の低下に加え、大型減税の恒久化に向けた法案調整が進むのにつれて、米国の財政悪化への懸念が増し、米株、米債、米ドルが揃って売られるトリプル安のリスクが意識された。関税で同盟国に強い圧力をかけることで、米国への依存を高める試みがかえってドルの信認を損なっている。米国債の利回りが落ち着かない限りドル安傾向は続くと思われる。
2.市場動向
◾️日本国債市場
日銀は中長期の物価の上昇を緩やかと表現しているが、足元の消費者物価は3.6%上昇するなど先進国の中で一番高くなっている。市場は、日銀の対応が遅れ、インフレがさらに加速するリスクを意識し始めていると思われる。国債増発への懸念やインフレ期待の高まりから流動性はリーマンショック時のレベルまで悪化し、変動性が高くなりすぎて国内の投資家は投資しにくい。国内の投資家のレパトリにより世界的に資産価値が大幅に低下するリスクが高まる。日銀は関税の影響を見極めるために政策金利の引き上げを見合わせているが、手遅れにならないうちにインフレへの対応を優先して利上げを判断する必要があると思われる。
◾️日本株式市場
拡大してきた企業業績の拡大にブレーキがかかった。日本経済新聞の東証プライム市場上場1000社の業績予想の集計によると7〜10%の減益が予想されている。日米関税交渉がまとまるまでは36000〜38000円の範囲で推移し、関税の影響を受けにくい銘柄が中心の展開になると思われる。自動車などを含めて関税が最低税率10%に引き下げられれば、株価は好感して大幅に上昇すると思われるが、先日の赤沢大臣の米国との交渉にはベッセント財務長官は欠席するなどハードルは高そうにみえる。インフレリスクや米国債の不安定な環境を考えると、ドル安円高への誘導はしにくい。対米の貿易黒字を大幅に削減するためには相当の円高が求められるが、無理に押し下げることなく市場の実勢を反映する形で緩やかな為替の円高を実現するのは至難の技といえる。米国債の残高の維持や買い増しすることを表明するのは効果的かもしれない。
◾️米国債市場
米国債は買いにくい展開が続くことが予想される。債務の拡大だけでなく、同盟国の反発も辞さないトランプ大統領のスタンスが米国の信認を失なわせ、同盟国でも米国債の残高を減らすなど需給が悪化している。ベッセント財務長官はトランプ大統領に牽制を効かせられる数少ない人物で今後もその影響力を保てるかが非常に重要になる。今後、7月にかけて減税法案が可決され、また関税の物価への影響が表面化してくるとインフレが強く意識され債券利回りがさらに上昇しやすくなる。
トランプ政権の政策はインフレ的で、コロナ禍以降の約10兆ドルの財政支出の余韻もあってインフレが再燃しやすい。ヘッジファンドの米国債の残高が膨張していて、今後インフレ懸念が高まる局面では一気に売却してくる可能性が高い。その際には、関税や減税規模の見直しがないと、現在の政策金利の水準では10年国債利回りは7月にかけて5%を大きく超えてくる可能性がある。
◾️米国株式市場
米国株式市場は強気な個人投資家に支えられて上昇してきたが、機関投資家は弱気の見方の方が多い。今期の企業業績は現在のところ、好調なハイテクに支えられて10%程度の増益が予想されているが、関税の影響や債券利回りの上昇は十分織り込まれていないので、今後は債券相場の動向に左右されやすい展開が予想される。
米国債券の利回りが株式市場に悪影響を与えるクリティカルな水準に近づいている。景気が力強さに欠け企業業績の先行きも不透明な状況で、米国10年国債利回りが4.7%を超えてくると、債券に対する株式の割高感が強まり、株式が大きく下落する恐れがある。
以上

私たちは、資産運用ビジネスを支援しています。
お問い合わせはこちら