News
お知らせ
市況レポート「テディベアのマーケットアイ」6月9日号
好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。
※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

1.金融経済情勢
◾️米国経済
6日に発表された5月の雇用統計は、非農業部門の雇用者が13.9万人増加した。労働市場は比較的堅調を維持していて、景気はゆっくり減速しているように見える。サービス業は堅調に伸びている一方で、製造業の雇用者は8000人減と今年最大の落ち込みになった。連邦政府の雇用数も5月に2万2000人減と2020年以来の大幅な減少となるなど、外見的な底堅さにもほころびが見え始めている。雇用が堅調なのは、トランプ関税の影響を見極めるまで雇用主は雇用の温存を優先し、レイオフに慎重になっているだけかもしれない。
トランプ大統領の支持率は45%前後とこの時期の大統領の支持率としては最低水準。議会民主党指導部の支持率は27%と、2008年以降のCNNの調査の最低を記録するなど民主党の不人気に助けられている。イーロンマスクとトランプ大統領の決裂が決定的になった。減税延長法案などへの批判は、SNSを活用した社会への影響力はトランプ大統領にとってリスク要因になりかねない。
■米国プライベートクレジット市場
FRBをはじめ各国の中央銀行はプライベートクレジット市場の動向への関心が高まっている。約290兆円規模まで急速に拡大したクレジット市場は将来金融安定性へのリスクになりかねない。銀行のような自己資本規制や監督を受けないヘッジファンドなどが機関投資家や富裕層から資金を集め、企業買収資金などの融資が中心になっている。融資先に関する情報開示も少なく、利回りを高めるために銀行からの借入で元手を増やし融資に回している。現時点で特段問題があるわけではないが、銀行システム全体で30兆円前後の融資を実行していると言われていて、かつて世界的な金融危機を引き起こしたCDOと類似点がある。景気が悪化して銀行が融資を停止したら、金融システム全体に影響が及ぶ。今後の金融危機の感染源は銀行発ではなく、ノンバンク融資へと移っている。
◾️日本の政局
参議院選挙で石破政権が過半数を維持するためには、自公で50議席確保する必要がある。公明党が10議席取るとすると自民が取らないといけない議席は40議席で、比例で過去最低レベルに近い12〜14とすると32の一人区で15程度取る必要があり微妙な状況と言われている。
野党が石破内閣不信任決議案を衆院に提出するか注目されているが、不信任案が可決されると内閣が総辞職するか衆院解散総選挙になる。
ダブル選挙になると結果次第では政権の枠組みが崩壊し、野党連立か与野党連立による新政権に繋がる事態も想定される。
2.市場動向
◾️米国市場
米国株式市場ではトランプ関税政策の限界を見越した楽観的な見通しが増えてきている。トランプ氏は対中関税など強硬な要求をしても、市場の反応や国内の反発に尻込みしてすぐに撤回するので、悲観する必要はないという見方が広まっている。
機関投資家は押し並べて慎重な一方で、株価との連動性の高い米国の民間部門の保有する資金量は過去最高の水準を上回っていて、こういう時は往々にして上値を試すことが多いと言われるが、機関投資家全体に、米国の比率を下げる動きが続いており、待機資金がこれから米国株に向かう可能性は低いと思われる。インフレや財政悪化懸念で米国10年国債利回りが5%を超えてくると、スタグフレーション的な展開になる
■日本の株式市場
ドルベースでみると円ベースほど東証株価指数の水準は悪くない。米ドルとユーロで換算した指数は最高値圏にある。今年四月以降でみると、ドルベースのTOPIXは8%の上昇で、世界の株高を牽引するドイツ株価指数の10%と遜色ない。5月の世界のM&Aの10%を日本企業が占めるなど、米政権の政策で世界経済の不安定さが増す中で投資先としての日本の魅力が高まってきている。物色の流れも変化しつつあり、グロース市場指数は5月までの年初来の上昇率は2割に達するなど、外需環境が不透明な中、内需中心の新興市場への関心が高まってきている。
◾️円債
ドルで投資する海外の投資家にとって日本30年国債利回りは、ヘッジを付けると7%を超える利回りが得られ魅力的に見える。財務省が国債の発行を四半期ごとに管理することで、市場に即した対応が可能となり超長期債の需給が改善する。また、日銀が引き続き国債の保有を減らしていけば、マーケットメカニズムが働きだしイールドカーブも正常化してくる。その結果、グローバルな債券投資を行う投資家にとって魅力的な投資対象になり、日本の国債市場は落ち着いてくると予想される。波乱があるとすれば、選挙対策として野党からの消費税の引き下げ要求で、政府が応じる可能性は低いと思われるが、万一引き下げられるようなことになれば、日本10年国債利回りは2%を超えて上昇する恐れがある。ただし、世論調査によると国民は冷静で引き下げに慎重な人の方が多い。
◾️為替相場
ドル指数は既に3年ぶりの安値水準に迫り、今後も、関税の影響による成長減速でドル安の基調が続くという見方が増えていて、今後一年間で1ドル130円まで円高が進むと予想している。トランプ大統領は6日、FRBの次期議長にケビン・ウォーシュ氏を早期指名することを示唆した。パウエル氏に代わって影の議長を置くことを示唆することで、FOMC前にプレッシャーをかけることを狙っていると考えられる。
以上

私たちは、資産運用ビジネスを支援しています。
お問い合わせはこちら