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市況レポート「テディベアのマーケットアイ」6月16日号
好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。
※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

1.金融経済情勢米国経済
(関税の影響はこれから)
米国の5月の消費者物価指数は前年比2.4%と市場予想を下回った。企業は関税の引き上げを回避する為、輸入を前倒しし在庫を積み上げるなどして値上げを回避してきたが、これからは徐々に収益を削ることになる為、価格の維持も限界になっている。これから7月から9月にかけて商品の値上げが本格化することが予想され、今後は物価が高まっていく可能性が高く、いずれPCEも3%に乗せるという予想が増えている。
(イスラエルのイラン攻撃)
イスラエルのイラン攻撃で石油の生産や流通に影響が実際に出れば、一段の原油高になりかねない。ホルムズ海峡が封鎖される可能性は低いと思われるが、応酬が続く限り市場は最悪の事態を想定して備えざるを得ない。米経済には既に減速感があり、ドライブシーズンにもかかわらず、ガソリン消費量が伸び悩むなど、異例の動きになっている。原油がもう一段値上がりすれば、インフレを勢いづかせ、消費をさらに冷え込みさせかねない。5月の雇用統計は失業率は4.2%と横ばいで全般的にはなお堅調に見えるが、失業者は四ヶ月連続で増えていて、これほど長く増加するのは2009年以来。特に22-27歳の大卒者の失業率は5.8%と高水準に達している。
■日銀
(日銀の金融政策)
日銀の政策金利は低すぎ、それが円安を助長していると米国に指摘されても反論の余地はない。物価高を抑え、実質的な購買力を早期に回復するには、少なくとも1%までの政策金利の引き上げ、早期の為替の円安の修正を図る必要がある。また、保有国債の削減のペースはようやく超金融緩和を始める以前の水準にもどったが、70兆円のETFと7000億円のREITについても量的引き締めに早急に取り組む必要がある。日本経済が完全に復活するには、為替も含めた市場機能の回復が求められている。
関税問題が落ち着いてくれば、日銀は利上のタイミングを探り始めると予想している。早ければ9〜10月にも利上げする可能性が高い。
2.投資戦略
■前提
トランプ関税による非グローバル化は、各市場の相関を低下させ、米国一極集中リスクが低減し国際分散投資へのシフトの過程で日本も恩恵を受けることになる。ただし米国の製造業の国内回帰は、グローバル企業の生産性を低下させ収益も低下することになることに留意しておく必要がある。
5日に発表された米財務省の外国為替政策報告書をみてみると、米国政府が143円でも円が弱すぎるし日銀の引き締めも続けるべきだと考えていることがわかる。今後各国との関税交渉が進展し、市場環境が落ち着いた局面を捉え、対日貿易不均衡の是正策の一環として、為替の円安是正と日銀に利上げを促すようなコメントが米国政府高官から出てくるかもしれない。日米関税協議が双方が納得する形で決着したとしても、為替について米国のスタンスがはっきりするまでは、為替や株式、債券などには慎重なスタンスで臨みたい。
ドルの低迷が続く一方で、メタやエヌビディアなどの好決算に支えられて株価は上昇している。これまでの米国第一主義から米国株を買い急いでいた海外の投資家が、関税の発表後は米国への信認の揺らぎから分散投資にシフトする一方で、MMFに滞留した米国内の待機資金が株式投資に向かっている可能性がある。
関税の影響から米国経済の先行きが懸念される中で、行き場を失った資金が株を押し上げるという、いつもながらの危険な流れになっている。イスラエルのイラン攻撃が中東全域を巻き込む紛争になるとは考えていないが、今の米国株はかなり割高になっていて株価下落リスクは高い。減税の効果もせいぜいGNPベースで0.5%程度と予想され、経済を持ち上げるほどのインパクトは期待できない。今後の株価は債券次第になるが、早期の利下げが遠のく場合には、S&P500指数で、5000ポイント前半まで下落する可能性がある。
米国の最大のウィークポイントは債務問題で、リーマンショック以降、プライベートエクィティーやプライベートローンなどで過剰なレバレッジが積み上がっている。今後、米国でインフレを十分抑え込めず、米国長期国債の利回りが5%を超えて上昇すると、金融システムも含めた金融不安を引き起こす恐れがある。
■日本市場
(意外に堅調な日本株)
日本株は貿易摩擦の影響で減益予想が多いにも関わらず、自社株買いが急増し株式市場を支えている。今年に入って既に12兆円と前年同期と比べて2割増えている。また、海外の投資家も米国への投資の集中を是正し、日本株を連続して買い越すなど日本株の需給環境は良好な状態が続いている。米国の株価が、8月から9月にかけて大きく下落したとしても、日経平均株価34000〜35000円の水準でサポートされると思われる。
低調な東証プライム市場と対照的に、東証グロース市場が個人投資家の旺盛な買いで復調していて、指数は年初来で18%上がるなど1年3ヶ月ぶりの高い水準で推移している。グロース市場は内需系の企業が多く関税の影響を受けにくいとして選好されている。市場改革の影響もあってグロース市場は想像以上に息の長い相場になるかもしれない
(注目される債券市場)
債券市場は参議院選挙を控え、財源の手当のない財政の追加支出や国債の需給にはかなり敏感になっていて、超長期債の価格が急落するなど政府や財務省も意識せざるを得ない状況になっている。今後、日銀の政策金利の引き上げや為替の円安の修正などが意識されるようになれば、イールドカーブのスティープ化に歯止めがかかる。長期10年国債の1.5%は恐らくこの正常化のサイクルのレンジの上限になると思われる。
以上

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