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市況レポート「テディベアのマーケットアイ」11月18日号

好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。

※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

1.トランプ政策
■トランプ政権の目玉
トランプ政権の目玉は関税と個人所得減税の恒久化。関税は米国内の製造業や雇用を守るためだとして、中国へ60%の追加関税とその他の国からの輸入される製品10~20%の関税をかけることを明らかにしている。アメリカの貿易赤字は年間1兆ドル以上に拡大していて、その内中国の昨年の貿易赤字は2790億ドルを占めている。中国に対しては、大統領に就任した初日にも、数カ月以内に関税を課す強制メカニズムを発効させる可能性がある。この追加関税が、中国側に輸入を大幅に増やすなどの対応を期待したものでないとすると、中国の報復も厳しいものになることが予想される。
メキシコに対しても厳しい姿勢を示していて、犯罪者や麻薬が流れ込む状況を止めなければすべての輸入する製品に直ちに25%の税金を課すとしている。また、メキシコからの輸入車に200%の関税をかけアメリカの自動車産業を守ると主張している。
個人所得減税の恒久化は関税による費用の増加を埋め合わせるもので、市場では景気の押上げ効果が大いに期待されている。但し内容は期限の延長で景気の失速を回避することは可能だが、加速させるほどの効果はないと思われる。法人税減税も対象が限られている。
■政策の米国経済への影響
トランプ氏はスタグフレーションを望んでおらず、関税による物価の上昇は、原油の増産によるガソリン価格の引き下げで対応する。また、イーロンマスク氏を司令塔に、規制緩和や歳出削減で財政悪化をくい止めつつ成長を継続させるとしている。
減税延長や拡大、輸入品の関税引き上げといった政策の影響を現時点で見極めるのは難しい。景気刺激策でインフレが再燃し、FRBは利下げの早期停止を迫られ、軽い景気後退に陥る可能性もある。
今回の選挙では所得が低くなればなるほど、投票先を民主党から共和党へ切り替えた人が増えたといわれている。トランプ氏が勝利したのは米国の格差拡大とそれに対する怒りが背景にある。低所得層の暮らしがこれらの政策で改善する可能性は低いのではないか。中国への大幅な関税率の引き上げや不法移民への対策の強化だけで行き場のない不満を解消することはできない。景気を拡大させるために、政策金利の引き下げやドル安誘導を要請し、かえってインフレを悪化させ、景気が悪化する悪循環に陥るリスクもある。

2.今後の市場の動向
■米国市場
11日にS&P500指数が6000の大台を超えた直後、インフレと金利上昇の可能性が再燃し下落した。S&P500指数は2.1%安の5870.6となり、9月以降で最悪の週となった。米国債10年物の利回りは4.43%で週を終えた。小型株のラッセル2000指数は4.0%下落した。トランプラリーに急ブレーキがかかったのは、物議を醸す人事案と長期金利の上昇が要因だった。司法長官、情報機関トップ、国防長官に自身への忠誠を基準に人物を抜擢した。人事を承認する上院で3人の資質を疑問視する声が共和党からも出ていて、承認手続きが難航する可能性が出てきている。重要なのは、関税の引き上げと合わせて来年早々に税制関連法案を成立させることが脅かされる可能性があることで、トランプラリーを支える成長促進策が妨げられたり遅れるリスクが生まれてしまうことになる。債券市場では、最近の堅調な経済指標の発表や、3.3%とインフレ目標の2%を大幅に上回る10月の消費者物価の上昇を受けたパウエル議長の「短期金利の誘導目標の引き下げを急ぐ必要はない」というコメントから、12月の利下げの可能性が大幅に低下し、米国国債10年物の利回りは一時4.5%まで上昇した。株式、債券の利回りの上昇は株式のリスクプレミアムをほぼゼロに縮小させた。市場は、減税の延長を含め株価にプラスになる材料はすべて織り込んだ。PER22.2倍と異常に高いバリュエーションで、配当利回りは1.2%まで低下した。ここまで上昇すると、今後景気が減速した時の反応が大きくなる。20日に発表されるエヌビディアの決算が注目される。
■日本市場
内閣府が発表した7~9月のGDP速報値は年率換算で0.9%のプラスで、個人消費が前期比0.9%のプラスになった。企業業績は好調で、失業率も低く賃上げの動きは今後も続きそうである。設備投資は人手不足によりマイナスで日本経済の課題になっている。先行きは海外の動向が左右しそうで、米国の通商政策の影響が出る可能性がある。また中国経済の動向も懸念される。その一方で、日本企業の投資に対する姿勢が積極的になってきている点や企業統治の改善を評価する投資家が増えている。日銀は経済・物価動向が見通し通り推移すれば、政策金利を段階的に引き上げていく方針を示しており、12月の政策金利の引き上げの可能性が高まっている。日銀の利上げがあれば材料出尽くしとなって株価の反転が期待できるとみている。為替も161.94円の7月高値を更新する可能性は高くないと予想している。
以上

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