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市況レポート「テディベアのマーケットアイ」11月25日号

好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。

※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

1.トランプ新政権の政策 ※次号は12月9日の予定です
■トランプ新政権の政策の狙い
トランプ氏の政策は米国の製造業を復活させることを最優先の目標にしている。そのためには輸入品に高い関税をかけ米国内の製造業の雇用を守り、外国に生産拠点をおく米国企業に課税し国内に生産設備を誘致させる。不法移民を強制送還し、米国人の賃金や雇用を増やす。そして偉大なアメリカを復活させる。
関税による企業や個人のコストの増加は追加減税で賄う。関税収入は財政赤字の削減に充てる。またイーロン・マスク氏を政府効率化省のトップに起用し政府予算を2兆ドル削減することで、財政赤字を圧縮し長期金利の上昇を抑える。インフレ圧力については、原油やガスを増産してガソリン価格などの価格の引き下げを図り、インフレを抑制する。ウクライナでの戦争やイスラエルとハマスやヒズボラとの戦闘については、早期の解決を図り国際的な緊張の緩和を実現する。また、金融や石油関係の規制を撤廃し、M&Aなどを活発化させ成長力を高める。
■トランプ氏の政策の実現可能性とトランプ政権のリスク
イーロン・マスク氏の2兆ドルの歳出削減はハードルが高い。政府予算6兆1000億ドルのうち裁量的で削減可能なのは1兆7000億ドルに過ぎない。給与総額は8000億ドル程度で削減余地は限られている。非裁量支出の負債の利払いが約6000億ドル急増しているのが大きい。1%以下で発行された米国債が4%の利回りの米国債に入れ替わる。大幅に政策金利を引き下げない限り削減は難しい。AIを使って納税申告書から脱税を検知できれば10年間で4兆8000億ドルの税収増になるという試算もあるが、実現は難しいと思われる。
中国へ60%、その他へ10~20%の関税を課すと10年間で2~3兆3000億ドル税収が増えるが、米国のタックスファンデーションの分析によれば、経済への悪影響を考慮すると財政収入全体では減少する可能性が高い。減税をすべて実行するとGDPを年0.5%押し上げる効果がある一方、現在のGDP 比6.5%の財政赤字がさらに拡大しインフレが加速する可能性が高い。FRBと政府との対立の激化が予想される。
トランプ新政権のリスクは、他の政治家の公約とは異なり、公約を実行することにある。当面の最大のリスクは大統領就任日で、議会乱入で有罪判決を受けた人物へ恩赦を与えたり、5000人の官僚をトランプ支持者に交代させ、行政・軍隊などを再編するなど民主主義に回復不能なダメージを与える恐れがある。

2.今後の市場の動向
■日本市場
上場企業の2025年の純利益は改善して前期比2%の増益になる見通しとなった。製造業は、中国や米国で採算が悪化し5%減益予想だが、非製造業は好調な金融を中心に10%の増益だ。ただ、下期にかけて収益が減少する予想になっていて先行きへの警戒感は強く、特にトランプ大統領に決まった米国が懸念材料になっている。
ただし、日本株は米国株に比べて割安で、円安の効果もあって業績の上振れする余地も大きく、補正予算の成立、ウクライナや中東情勢などの地政学リスクの落ち着きや、トランプ関税の発表など不透明要因が薄れてくれば、水準訂正が行われる可能性が高い。
トランプ政権の政策はインフレ政策なので、日銀は金利の正常化スタンスを継続すると思われる。政策効果の期待できる補正予算の年内成立の目処が立てば、次の利上げは遅くとも1月までには行われると思われる。
■米国市場
米国株式はトランプ新政権の規制緩和や減税への期待から大幅に上昇してきたが、ここからは冷静に第2期トランプ政権の政策を精査することになる。新トランプ政権の政策は、関税、移民や減税とインフレを押し上げる傾向が強く、FRBの金利の引き下げのピッチは遅くなる。現在の米国経済は実質所得が増加、生産性も向上、インフレも落ち着き利下げも予想されるなど、申し分のない状況にあるように見える。トランプ新政権は財政支出を拡大し規制の緩和を進めM&Aブームを起こそうとしている。気を付けたいのは、今の景気サイクルは大規模な財政刺激策などによる一時的、一過性の要因にけん引されたもので、ベースの基盤は脆弱で突然需要が減少する恐れがある。このタイミングで金融規制を緩和しレバローンやPE投資が拡大していくと、将来の金融危機の発生リスクが高まる。バフェット氏がITバブル崩壊時並みに割高になった米国株を売って、米国短期証券の保有を増やしたという。
トランプ新政権のメンバーは、1期目とは異なり、経験の乏しいイエスマンで固めている。市場が期待しているような、何か不都合な事態になれば、政策を微調整して株価が下落するリスクを回避するといった対応は期待できない。そもそもトランプ新政権の政策は製造業の復活を目指していることを考えると、ハイテクより景気敏感株や米国10年国債、日本などのその他の国の株式へシフトが起きてくる。
以上

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