News

お知らせ

市況レポート「テディベアのマーケットアイ」

好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。

※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

⒈金融経済情勢                         ※次号は7月22日の予定ですOBBB「ひとつの大きく美しい法案」
トランプ氏が7月4日に署名成立させたOBBBは、持続不可能な現行制度の継続で、この
1年で米国の財政赤字は、GDPで6.7%の水準に達する。関税収入や歳出削減は一定の助けになるが、それだけでは債務比率の上昇は食い止められない。楽観主義者は、成長が加速すれば雇用や賃金が上昇し、債務負担が軽くなるというがOBBBの減税は既存のもので新たな刺激効果は乏しい。今後も続く事が予想される国債の大量発行により債券市場が急落すると、その対策に伴うコストは膨大なものになる。最終的にインフレを許容し人為的に金利を下げる政策に頼らざるを得なくなる可能性が出てきている。トランプ政権は政策金利の引き下げで財政赤字などの深刻な問題には対処できると考え、トランプ大統領はパウエル議長に繰り返し利下げ圧力をかけている。FRBへの圧力は将来のインフレ圧力を高めかえって長期債の利回りを押し上げかねない。ベッセント財務長官は長期国債の発行を減らすことで長期金利を押し下げようとしているが、短期債の発行が増えると、FRBによる財政支配につながりかねない。

米国のトランプ関税の影響は軽微?

米財務省によると、5月は通常の3倍の関税収入が米政府に流れ込む一方で、5月のCPIは日本からの自動車や中国からの衣料品の値下がりで0.1%の上昇にとどまった。新たな関税の引き上げが物価高につながるという懸念を一蹴した。こうした状況はトランプ大統領をさらなる高関税に向かわせている。トランプ大統領が今週発表した一連の輸入品に関する関税を受け、米国の実行関税率は17〜18%に上昇する見通し。今後積み上げた在庫が少なくなるにつれて物価への影響は顕現化してくる可能性は否定できない。トランプ政権は、金融市場を混乱させずにどこまで関税を引き上げられるか試している。

日本の関税交渉は作戦ミス
トランプ大統領は日本に対し25%の関税をかけると通告した。8月1日に現在の基本税率10%に15%が上乗せされる。関税や非関税障壁を見直せば交渉の余地があることを日本に伝えてきた。日本は、過去の対米投資の実績から、全ての製品別関税や相互関税を完全撤廃は可能と見込んでいたが、トランプ大統領は予想以上に強硬で、交渉は膠着を余儀なくされている。
時間的な制約がある中、コメの緊急大量輸入や、自動車の輸出台数に応じた段階的な税率の導入や、米国から日本への日本車の逆輸入分の上乗せなどトランプ大統領が満足する対案を早急に用意する必要がある。


2.マーケット動向
米国株式市場
・米国株式市場は最高値を更新しているが、値上がりは、不透明な関税政策や財政への懸念から一部の大手テクノロジー企業に集中し過ぎて危ない。
米S&P500指数の採用銘柄の4〜6月期の利益は前年同期比5%程度の増益と8四半期ぶりの低い伸び率が見込まれる。現在のような関税政策をめぐる経済の不確実性が高い状況が続くと、企業の成長期待へ懸念が生じ、ただでさえ割高な米国株の先行が懸念される。株高の持続性が危うくなる。
・米労働省は15日、6月の消費者物価を公表する。いよいよ物価を押し上げるか注目される。パウエル議長も以前6月の消費者物価の重要性を強調した。関税コストを負担するのは輸出側、輸入業者、小売業者と消費者になるが、どの主体がどれだけ消費者に価格転嫁するかは、消費の強さや企業戦略に左右される。6月のCPIの予想は2.6%とゆるやかな上昇にとどまる可能性が高いが、もし高めの数字になると債券利回りが上昇し、株価は下落する可能性方が高い。

日本の株式市場
3月末から日経平均は、日米通商交渉が難航しているにもかかわらず上昇している。
TOPIXベースの一株当たり利益は5.4%の増益が見込まれ、増益幅は期初より縮小したが減益は織り込んでいない。
今後の株式市場は参院選挙の結果に左右される。自公が過半数割れたら、政局は一気に流動化し、かなり荒れた展開が予想される。株価は想定される政権の枠組みにもよるが、10%程度下落するのではないか。債券市場の動向にも大きく左右される展開になる。日経平均で35000〜36000円が下値の目処になる。
足元で続く海外投資家の日本株の購入は中長期投資を目的としたものが中心で、裁定買残や信用残は少なく、投機筋や個人の短期狙いのポジションは積み上がっていない。海外投資家の中には、堅調な国内の設備投資や企業の積極的な生産性の改善への取り組みに注目し、何十年ぶりに米国に代わる投資先として投資を始めたところもある。政治的な混乱を嫌気して大きく下げたとしても、下げは一時的なものにとどまる可能性が高い。
日米通商協議については相互関税の水準と自動車関税が焦点になる。合意内容がよほど厳しい内容にならなければ、日本株は輸出関連株を中心に大きくリバウンドすると予想している。日本の債券市場参院選挙の結果次第で石破政権の基盤が揺らぎ、将来財政支出の拡大が懸念され30年債は一時3.08%まで上昇した。選挙の結果によっては、消費税の減税などに積極的な政党が躍進し、政権の枠組によっては財政赤字が大幅に拡大し格下げリスクが高まり、長期国債の利回りが上昇する可能性がある。ただし、英国のトラス政権のように、国債の利回りの大幅な上昇は、金融市場の大混乱を通じ、世間に歯止めのない財政支出拡大の恐ろしさや健全財政の重要性を認識させる効果がある。金利が上昇した際には、特に政策金利との連動性の高い2年、5年の中期ゾーンの国債には銀行などの金融機関の買いが予想され、また10年国債や超長期国債には生保や年金などからの買いが期待できる。
                                          以上

この記事をシェアする

私たちは、資産運用ビジネスを支援しています。

お問い合わせはこちら