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市況レポート「テディベアのマーケットアイ」7月22日号

好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。

※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

⒈金融経済情勢                        ※次号は8月4日の予定です

日本の政治はいよいよ政党乱立時代へ
参院選は野党の新興勢力が躍進し、今後は多党化が進みそうだ。首相が交代しても今までのような自民党政権に戻ることはない。多党化は複雑になる民意を反映しやすくなる反面、スピード感を持って政策を決めていくことが難しくなる。野党はそろって消費税減税を訴えたことで、今後は財政運営に影響が出ることはを避けられない。
自民党としては野党との協力体制を築くため、社会保障改革に関する協議を提案する予定だ。増税などの負担論を取り上げ、責任を共有して組める政党を探すことになる。立憲民主は財政問題への理解が深く連携しやすいが、原発や安全保障での溝が大きい。社会保障改革の議論だけ取り出して一致した方向性を示せるか。秋の補正予算へ向けて、結局は国民民主や維新と案件ごとに協議をしながら進めることになると思われるが、財政支出の拡大は避けられない。

日銀の金融政策
日銀は30、31日の会合で、トランプ関税による内外経済の下振れリスクを警戒し、政策金利を0.5%程度に維持する見通しだ。また、展望レポートに関しても議論し、最新の見通しを示す。前回2.2%とした25年度のコアCPI見通しを引き上げるかどうかが焦点になる。基調的な物価上昇率が2%の物価目標と整合的な水準で推移するというシナリオを堅持すると思われるが、6ヶ月連続で消費者物価上昇率は3%台の伸びが続いており、2%の日銀の目標を38ヶ月連続で上回っている。消費者目線で見ると今の物価の上昇は許容範囲を超え、生活者の日々の生活を脅かしている。中小企業も円安による原材料や資材価格の上昇に苦労している。日銀は政策判断の重点をどこに置くか再考する必要があるのではないか。

トランプ施策と米国経済
先日連邦議会で可決されたトランプ減税法案は、連邦議会両院税制合同委員会の分析によれば経済成長を今後10年間で0.4%押し上げるに止まると指摘する。
トランプ大統領の就任後、米国への移民は顕著に減少しており、2023年のピークの350〜400万人から4月時点で年間60万人のペースに減少した。エコノミストは今年のGDP成長率が、移民の規制のなかった時に比べ0.8%低下する可能性があると予想している。
トランプ政権は発足から半年を迎え、高関税が物価の上昇や景気の悪化を招くという悲観論は後退し、減税などの政策が企業の投資を後押ししつつあるが、8月1日には新たな関税率を適用されるとともに、分野別関税では医薬品や半導体だけでなく細かい製品分野まで網が広がっている。関税収入が予想以上に積み上がりトランプ大統領の強気の関税政策は続く。耐えきれなくなった企業から関税は消費者物価に転嫁されつつあり、今後その流れが加速する可能性がある。

2.マーケット動向

米国市場
トランプ大統領の施策、特に利下げの要求はハイテクバブルを助長している。米国株式市場で再びハイテクバブルを懸念する声が強まっている。S&P500指数の時価総額上位10社の予想PERがITバブル時の25倍を上回り約30倍に達している。利下げへの期待が相場を支えている。トランプ大統領がパウエルFRB議長に利下げを執拗に求めているのは、今後関税の影響で物価の上昇が顕現化する前に、利下げの道筋をつけておきたいと考えているのではないか。財政赤字を減らすには、高い関税をかけるとともに、短期金利を引き下げて国債の利払い費を減らす必要がある。
主要6通貨に対するドル指数は年初来9.3%値下がりしており、足元では若干戻してはいるものの、上半期のパフォーマンスは過去50年で最悪になっている。もしパウエル議長がトランプ大統領の利下げ要求に応じると、短期債が買われて長期債の利回りが上昇する。基軸通貨としてのドルの価値はFRBの独立性に依存しているので、そのケースではドルに深刻な売り圧力がかかる。株価は一時的に上昇するが、債券の利回りの上昇を嫌気して下落する。
ドルの下落している要因は、貿易戦争リスク、急速なインフレに襲われるリスクや資本流出懸念などすべてトランプ大統領の施策による。ただし、円だけは参院選挙や難航する貿易交渉が嫌気され円安気味に推移している。

日本市場
自公の参議院で過半数割れの影響は少し時間おいて現れてくる。消費税の引き下げなど野党のポピュリズム的な政策は、国債利回りの大幅な上昇や日銀の利上げなどが実際にコストとして現れて初めて株価に悪影響を与える。当面の焦点は8月1日に期限のくる日米関税交渉の行方や、石破総理の去就になる。相互関税を短期間で25%からどこまで下げられるか、自動車の関税についても、輸出台数に連動して引き下げることができるのかに注目が集まる。コメの緊急輸入や、米国からの日本車の逆輸入などどれだけ効果的な対策を用意できるか石破政権の実力が問われる。25%の関税がそのまま課されるとかなり厳しくなる。
これからの政治家は、米国のように債券市場や株式市場の動向に敏感でないと務まらない。市場を意識した政策の舵取りができることが重要になる。
                                          以上

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