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市況レポート「テディベアのマーケットアイ」9月1日号
好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。
※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

※来週は休刊です。次号は9月16日の予定です。
⒈金融経済情勢
■日本経済顕現化する関税の影響と金融政策
・基幹産業の自動車の生産は7月に前月比6.7%と大幅なマイナスになるなど、日米交渉で合意したはずの車関税引き下げの遅れから7〜9月期以降の景気の下振れリスクが強まってきている。前倒し購入の反動もあって輸出の伸びはあまり期待できない。景気先行指標の新規求人にも陰りが見え始めている。日本経済は4〜6月期まで5期連続のプラス成長記録してきた。また、需給ギャップもプラスに転換し、潜在的なデフレ圧力となる需要不足は解消され、人手不足から供給不足に転換してきている。この状態が定着できるかは関税次第になる。日銀は関税の日本経済への影響を見極めつつ、利上げのタイミングを図ると思われる。2日の氷見副総裁の講演でのコメントが注目される。
■米国経済トランプ関税政策で製造業は復活するか
・米国はこれまで高付加価値産業に資源をシフトさせた結果、製造業の基盤は著しく劣化し、中国への経済依存度が著しく高まり、経済安全保障の観点から製造業の競争力強化は必然の結果となっている。ただ、製造業復活のハードルは高い。米国の高い人件費を考えると生産能力の向上は容易ではない。ましてや、移民規制は人手不足を深刻化させていて中長期の成長期待をさらに低下させている。また、たとえ製造業が復活しても、これまで強みにしてきた成長パターンは失われ、成長は鈍化しインフレは加速する。
・AIを導入した企業のメリット
エヌビディアは28日.好調な決算を発表し、ジェイソン・ファン氏は2020年代末までにAIインフラへの支出は3〜4兆ドルに達すると述べた。エヌビディアにとっては、売上高の56%を占める上位3社を満足させていれば利益は順調に増え続けることになる。問題はMITメディアラボの最近の調査によると、AIを導入している組織の大半がリターンを全く得ていないことである。莫大なAI支出によって建設されているインフラが、ハイテク企業やエネルギー、インフラ企業以外には利益を生み出していないのである。現在のAIブームは、好調な収益に支えられた上位3社の顧客の投資によるもので、本格的な普及にはなっていない。
⒉マーケット
■市場動向下落リスクの高まる日米の株式市場
・米国株式市場は4月以降FRBの利下げを催促して上昇してきたが、現在の水準は政策金利の年内2回の利下げを織り込んでおり、ここからの上昇余地は限られている。今後は関税政策や不法移民対策の経済や企業業績への影響が顕現化してくる。サービス価格は上昇基調にあり、移民の急減で労働市場がタイト化するなど、インフレ圧力は依然強いにもかかわらず積極的に利下げを進めると、米国債がスティープ化し米国経済がスタグフレーションに陥るリスクが高まる。米国の10年債の利回りが4.5%を上回ると、株価の割高感が一層強まり、大幅に下落しやすくなる。ベッセント財務長官は国債発行の年限を短縮化し、必要があれば量的な緩和も辞さないと思われる。
米国市場に連動して上昇してきた日本株も、現在の水準は米国の関税による企業業績の減少、日銀の利上げやそれに伴う円安修正の可能性を織り込んでいない。大和証券によると、主要企業は1円円高になると経常収益が0.4%押し下げられるとみていて、10円程度円高になるとさらに4%程度減益になる。米国の景気減速や企業業績の悪化で米国株が下落すると大きく調整する可能性が高い。また、日本でも財政支出拡大への圧力が確実に高まっていて、政権の枠組み次第では国債利回りが急上昇し、ドル安、株安、債券安になるリスクもある。
・膠着状態の円相場
ベッセント財務長官の発言にもかかわらず、需給要因が均衡し相場の変動を阻んでいる。背景にはFRBや日銀のやや慎重なスタンスがある。パウエル議長や日銀の植田総裁は、もう少し時間かけて関税の影響を見極めたいとしていて、ベッセント財務長官の意向とはかなりの温度差がある。米国の労働市場のさらなる悪化や、トランプ政権の対日関税の25%から15%への引き下げなど、FRBや日銀に対し政策の変更を促すような材料が出てくるまでは、膠着した状況が続くと思われる。
■投資戦略
・日本株は当面慎重スタンスを維持
米関税の25%から15%への引き下げ、日銀による政策金利の引き上げや為替の円安修正などが確認できるまでは、当面慎重なスタンスを維持する。物価の上昇は金融危機を引き起こすと言われているが、一方で、インフレ下では長期で見れば資産収益率が賃金の上昇を上回り、株式投資は有効とも言われている。今後の株式投資は、いかに適正価格で投資できるかが重要になる。
現在の日本株の水準は、PER17倍、今期は5%の減益、来期10%増益予想がベースになっている。米国の景気や企業業績の減速、日銀の利上げやそれに伴う為替の10円程度の円高をベースに、今期10%減益、PER15倍とすると35000円前後が下値目処。日銀の利上げと円高を確認してから投資を再開したい。米国株はこれから景気後退期に入る。株価は景気後退期に下落すると調整は長くなる。
・債券利回りは上昇
日銀の政策金利は1%まで引き上げられると予想する。ただし、0.5%から0.75%までの引き上げのインパクトが最も大きく、1%への引き上げ時には、カーブはフラットする。日本国債10年の予想するレンジは1.5〜1.8%で、レンジの上限では積極的に投資したい。
米国債は、クレジットや長期債は避けて中短期債中心に投資する。カーブは1.5〜2%までスティープするリスクがある。
・為替は円高
米国の実質金利は高すぎ、日本の実質金利は低すぎる。日本の需給不足は解消され、このまま政策金利を低位で放置すると、インフレが加速し慌てて大幅な利上げを余儀なくされるリスクが高い。日米共にスタグフレーションに陥るリスクにさらされている。トランプ政権は赤字削減のため、緩やかなインフレを容認する姿勢で、FRBは政策金利を来年の春までに3%まで下げると予想している。日銀はビハインドザカーブに陥るリスクを恐れ、1%まで政策金利を引き上げる。ドル円の為替レートは1ドル130円程度まで円高が進む可能性が高い。
以上

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