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市況レポート「テディベアのマーケットアイ」9月16日号

好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。

※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

⒈金融経済情勢自民党の新総裁に求められるもの
石破首相が退陣を表明した。次の政権に求められる最優先課題は「物価高対策」で、秋の臨時国会に補正予算の提出が予定されている。有権者の歓心を買いやすいバラマキでなく、手取りを増やす政策が必要になる。新総裁には、解散総選挙を回避し、次の選挙の2028年までの3年間を有効に使って、国民の不満を和らげる負担軽減策の実現が求められる。社会保障費の総額は25年度予算で140.7兆円に達した。2040年度には190兆円まで増える可能性がある。税金や社会保障料の国民負担率は48.4%とOECDの平均より低く、消費税の水準も国際的に高くない。しかし社会保険料は、19%と大幅に高い。歴代の自民党政権が、反発を招きやすい増税を避け取りやすい社会保険料に頼ってきたことによるもので、今回の選挙で現役世代の政治に対する不満が一気に噴き出し、自民党が惨敗したのは当然の結果といえる。「物価高対策」はインフレの抑制と現役世代の手取りの増加が中心になる。インフレの抑制には金利の正常化と円安の修正が必要になる。また、給付の質を落とさず、現役世代の負担を減らすには既得権益の抜本的な削減が必要になる。
衆議院議員の任期も次の参院選も2028年になる。今度の総裁には、選挙に勝てる人物でなく選挙を避けることのできる人物が求められる。

米国経済
8月の消費者物価指数は予想通り前年同月比2.9%の上昇となった。食品価格が前年同月比で3.2%と2年ぶりの水準だ。引き上げられた関税を価格に転嫁する動きは予想より緩やかで、企業が値上げに苦労している。企業が利益を守るために値上げをすれば、消費者物価に上昇圧力がかかる。セントルイス連銀によると7月時点で消費者物価への転嫁は20%にとどまっており、今後2〜3四半期かけて転嫁が進むとみているが、企業にとって関税の転嫁は簡単ではない。特に中小企業は厳しい立場に置かれている。

日銀の金融政策
今後の日銀の金融政策について、正副総裁は慎重なスタンスを崩していないが、利上げが遅れるとインフレが継続してしまう恐れがあるという見方が広まりつつある。トランプ大統領が4日に日米合意を履行する大統領令に署名したことも経済の先行きへの不確実性を一段と低下させる。実質賃金は7月に前年比の伸びが7ヶ月ぶりにプラスに転じた。今年の春闘での賃上げが物価の伸びを上回り賃金の上昇が続いていることを示している。国内については、政治情勢が混乱する中でも経済・物価情勢はシナリオに沿った動きとみていると思われる。10月の支店長会議や日銀短観で、米関税の悪影響が限定的になることが確認できれば、10月決定会合で利上げする可能性が高い。

⒉マーケット動向

日本株式市場
関税交渉が決着したのを受けて日本株は収益改善期待から米国関連株を中心に値上がりし、最高値を更新していた。日本経済のデフレ脱却を好感した海外投資家や新政権の財政支出の拡大を期待する国内投資家の買いが株価を押し上げている。
今後、自民党の新総裁が誰になるかによって株価の動きは大きく変わってくる。物価高対策のための補正予算の成立には野党の協力が不可欠だが、どの政党と組むかによって政策も変わってくる。野党に妥協してばら撒き政策を続ければ市場の期待は長続きしない。新総裁には、社会保障費の現役世代の負担の軽減を実現する改革の実行力や、潜在成長率を高める成長戦略の構想力などが求められる。日銀による金利の正常化と円安の是正も必要だ。為替の円安が修正されれば海外投資家は日本株を購入するメリットが大きくなる。また、円高で実質所得が増加すれば消費が増え経済の成長率も上昇する。当面政権を維持できるという見通しがたてば、今まで慎重だった投資家の買いで株価は大きく上昇すると思われる。
まだまだ日本の企業のROEの数字は欧米の企業には見劣りすることは間違いない。今の株式市場の上昇に実感を感じない投資家は多い。ただし、自分自身のこれまでの相場の失敗を振り返ると、実感を感じる投資家が増える頃には株式市場はさらに上昇してしまっている可能性が高い。

米国株式市場
FRBは16、17日のFOMCで9ヶ月ぶりの利下げを決める公算が大きい。市場は年内3回の利下げを織り込んでいて、金融相場で株価の大幅な上昇を見込む関係者が増えているが、上昇は一時的なものになるとみている。
インフレが高止まりしていて、市場の想定どおりに利下げが行われるか不確実性が高い。コロナショック以降、大量のマネーを供給した結果、大幅に利上げをしたにもかかわらず、マネーは縮小せず引き締めの効果は十分でなかった。インフレは2%後半で高止まりしていて落ち着かない。インフレが再加速する可能性も否定できない。また、雇用の減速がトランプ関税にあるとしたら、おそらく利下げをしても雇用を回復させるのは難しく、景気は減速し、企業業績も悪化する。インフレを加速させるだけになりかねない。
今、懸念されているのは実態の把握が難しいシャドーバンキングの動きで、企業業績が悪化すると、1.5兆ドルまで膨らんだプライベートクレジットファンドが企業向けの融資を引き上げる可能性がある。金融システムにどういうルートで影響を与えるのか、十分な分析ができていないことが懸念される。
                                           以上

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