News
お知らせ
市況レポート「テディベアのマーケットアイ」9月22日号
好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。
※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

⒈金融経済情勢
自民党総裁戦 自民党の総裁選は小泉進次郎農相の勝利がベースケースになりつつある。小泉農相は20日、立候補表明会見で、物価高への対応として、所得税制の見直しを進め、基礎控除などを調整する仕組みの導入を表明した。所得税減税と給付を組み合わせた中低所得者を支援する給付付き税額控除の仕組みづくりに取り組む姿勢を示した。金融財政政策についても、インフレ時代の新たな経済運営の構築を強調した。インフレで伸びる税収を活用して、国内設備投資の促進や賃金の増加を図り経済成長と生活の安定を目指すとした。金融政策については、日銀の専管事項としながらも、インフレの抑制を重視した姿勢を示した。少数与党下では、政策や理念の一致する野党との連携を図ることが最大の論点になる。新総裁に誰がなるとしても、安定した政権運営を実現するために、どのような枠組みが作れるか議論がなされていくことになるが、日本維新の会が最有力候補に浮上している。
日銀の金融政策
植田総裁は19日に開いた政策決定会合後の記者会見で、ETF とREITの売却を決定するとともに利上げを続ける方針を表明した。関税の影響など先行きの不確実性が高く、また米国経済も下振れリスクがそこそこあり、もう少しデータを見たいと話した。決定会合では2名の委員が0.25%の利上げを提案し、反対多数で否決された。今回の決定会合は現状維持に全員賛成するとみていた市場関係者を驚かせた。政府内にも利上げを容認する意見が出て来るなど、年内の利上げに向けて準備が進んでいるようにみえる。
米国経済
米商務省の速報によると、8月の小売売上高は前月比0.6%増と市場予想を大きく上回った。多くは資産価格の上昇の恩恵を受けた高所得層の支出によるものと考えられる。低所得層の消費支出はインフレで圧迫されていて、8月の消費者信頼感指数や6ヶ月先の景況感を示す期待指数は揃って低下した。アトランタ連銀のGDPナウによると、7〜9月期は3.3%と高い成長が予想されているが、景気の実態を正確に表していると思えない。最新の世論調査によるとトランプ大統領の支持率は39ポイントと先週から2ポイント低下し、特に若年層の支持は49%から26%に落ち込んだ。雇用や経済の支持率は総合でマイナス17%に低下し、金融緩和と関税の政策ミックスは国民の支持を得られていない。今の米国経済の問題は統計だけでは実態を掴みづらく、突然急激に変化するリスクがある。
FRBの利下げ
FRBは9ヶ月ぶりに利下げを再開したが、関税と金融緩和の組み合わせでは、緩和マネーは投資には向かわず、金融市場に流入してしまう。
FRBは22年以降政策金利を5%に引き上げたが、緩和マネーを吸収しきれずMMFが7.3兆ドルになるなど市場にお金が溢れている。日米欧の株価は最高値を更新するが、企業は関税政策で景気の先行きが見えず、設備投資を控えて手元資金を金融市場に投じている。デロイトによると、米国の設備投資は25年前年比0.8%、26年は0.55%と低い伸びが予想されている。
FRBは雇用のリスクを指摘しているが、要因は高金利ではなく関税であり、いくら利下げをしても、景気や雇用の悪化は止まらない。関税による負担は単純に計算すると少なくとも年に約4500億ドルもあって、それが消費者の負担となって跳ね返ってきている。日本や欧州がトランプ大統領に約束した巨額の米国への投資が確認できるまでは、雇用の悪化は止まらない。
⒉マーケット動向
日本株市場
海外投資家の間で、米国株からのポートフォリオ分散の手段として日本株が注目を集めている。日本経済は今後実質で1%前後成長すると予想していて、消費者物価は今後も上昇が続くが、ペースは緩やかになり、2%近辺に落ち着く見込みで、企業の成長にとって好ましい環境になっている。政策金利は0.5%で、来年には1%に上昇すると予想されているが、消費者や金融市場に悪影響を与えるレベルではない。10年国債利回りも1.6%台で、米国に比べて、株式投資が優位な状況にあり、バリエーションも割安だ。企業収益も向こう2年間でEPSは10%程度増えると予想され、また年間の自社株買いや配当は20兆円を超えるなど、遅れていたガバナンス改革も進んでいる。巨額の資金が現預金に滞留していて、現預金の一部がさらに流入してくれば、株価の一層の押し上げが期待できる。海外投資家にとって日本は、相対的に株価を押し上げる材料が揃っていて、分散投資を行う手段として日本株は合理的な判断だ。
日本株の割安感はかなり修正され、相場も加熱していて、いつ下落してもおかしくないが、株式の需給は極めてタイトで、今後想定される相場の調整も小幅なものにとどまるのではないか。中間決算でインフレの定着による来期以降の企業業績の拡大が確認できれば、来年にかけて上昇する展開を想定している。小泉新総裁の誕生も相場の押し上げ要因になる。
懸念材料は10月の日米中央銀行の政策金利の変更で、日銀の利上げとFRBの利下げが重なると円高が進んで株価が大きく下落する可能性がある。
米国市場
米国株式市場は年内あと2回、来年3回程度の利下げを期待した水準まで上昇した。一方、債券市場は年内あと2回の利下げを織り込んだ水準で下げ止まった。10月以降の利下げの有無は、今後の雇用の悪化、企業業績の落ち込みやインフレの上昇などが要素になる。今回のような将来のリスクに備えた予防的な利下げは、通常連続的に行われるとみられているが、今後の数字の出方や組み合わせによっては複雑な動きが予想される。株式市場はかなり早いピッチで上昇してきているので、いつ大きく調整してもおかしくない。10年国債の利回りの上昇が最大のリスクになる。
以上

私たちは、資産運用ビジネスを支援しています。
お問い合わせはこちら