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市況レポート「テディベアのマーケットアイ」9月29日号
好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。
※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

⒈金融経済情勢 ※次号は10月14日の予定です
自民党総裁選
小泉農相のインフレに合った政策を遂行するという考えは、誰が総裁になるとしても今後政策のベースの考え方になる。金融政策は緩めすぎず、引き締めすぎず、緩やかなインフレを持続させることを目的に運用される。現役世代の負担軽減が主要な施策になるが、財源は消費税減税を避け、自然増収がメインになる。インフレになると景気の変動は大きくなって、海外景気の動向によってはスタグフレーションに陥り、財政赤字が拡大してしまう可能性もある。
インフレ時代の企業経営
日本の多くの経営者にとってインフレ局面は未知の領域になる。デフレ下で企業は、リスクに備えて内部留保を貯めてコスト削減で最適化を図ることが求められ、効率化を図ることが重視された。インフレ時代では継続的なコスト上昇圧力に対し、コスト削減に頼るのではなく、価値創造を通じて模倣できないブランド価値を高めることが重要になる。インフレ下では、借金の実質的な価値が低下するため、積極的な設備投資や事業拡大で借入を活用しやすい。人件費の増加に対しては、AIやIT、DXを導入して生産性を高める必要がある。良いものを適正な値段で売って売り上げを増やし、収益を伸ばす経営が求められる。インフレ時代は、会社が存続しているだけでもコストが増加し、景気の変動も大きくなる。経営の優劣によって企業の淘汰が進みかねない。経営者には、資産の再構築に取り組み、イノベーションを起こすアニマルスピリッツが求められる。
米国景気とビッグテック
AI投資の急増で米国の第1四半期のGDPは1%押し上げられたと言われている。今後10年間の米国の年間設備投資は約5000億ドル、累計で2030年までに3兆ドルに達するといわれている。データセンターに設置されるGPUの寿命は短いため迅速な投資の回収が必要になると言われている。モルガン・スタンレーの推計を前提にすると、資本コストの回収には同規模の年間AI売り上げが必要になるという。3兆ドルは米国GDPの10分の1に相当する数字で、実現できる可能性は低いと思われる。以前にも紹介したMITの最新報告によると、AIを組み込んだ企業の95%は投資利益を得られていないという。大多数の企業が依然として重要な業務は人間に頼っている。オープンAIの収入は急増しているが、チャットGPTを利用する8億人のうち有料サービスの利用は2%未満という。
自分がやらないと誰かが新技術で自分達の顧客を奪うという囚人のジレンマが、企業に無謀とも思える数兆ドルにも及ぶ投資を続けさせている。過小投資のリスクは過剰投資のリスクを上回るとビッグテックの経営者たちは感じている。関税の景気への悪影響が懸念されているにもかかわらず、米国景気は比較的堅調に推移している。AI関連のビッグテックの株価の上昇が、富裕層の消費を刺激し、米国景気を支えている。
⒉マーケット動向
日本株の今後の見通し
株価は、高値警戒感から揉み合いが続いているが、海外投資家が2週連続で売り越すなど今までのリード役が降り始めており、反落する可能性が高い。現物株の裁定買残が10億株を超えているので、一旦、先物に手仕舞い売りが出ると株価の下げがきつくなる。
米政府の派生商品への課税問題も気になる。日米交渉の合意により、相互関税や自動車・自動車部品関税の税率は15%となったが、米政府は、50%の関税がかかる鉄鋼・アルミを素材に使う製品を派生商品として課税対象に追加したことで、あらゆる業界に影響が広がっている。同様の問題は半導体や木材など、鉄鋼やアルミを使わない製品でも起こりえる。中間決算でどの程度の悪影響を企業は見込んでいるのか見極める必要がある。
日本株は短期的には下落するが、中長期的には上昇すると予想している。日本の低迷の根本的な原因はデフレで、これまでは慎重な経営が求められてきたが、今後は生き残りをかけて、インフレ時代に対応した積極経営に転換する企業が増えてくると思われる。
米国はこれから景気後退期を迎え、株価の低迷が予想されるが、負債が少なくキャッシュリッチな日本企業への影響は一時的なものにとどまる。インフレ時代に対応し日本企業がアニマルスピリットを取り戻せば、中長期的に日本株の一段の上昇も期待できる。
米国株の下落リスク
主要AI銘柄は年初来30%近く上昇した一方、それ以外のS&P500は8%の上昇にとどまる。プロの投資家は、AI銘柄に投資しないと常にアンダーパフォームに陥り大事な顧客を失うリスクに直面している。インデックスに投資している投資家も同様に乗り遅れるリスクを感じて、囚人のジレンマに直面している。恐らくいつか将来のある時点で多大な損失を被ることになる。今までの慎重な見通しをことごとく覆してきただけに、何がきっかけになるかを予想するのは難しい。意外に些細な事件がきっかけになるかも知れない。
米国政府機関の閉鎖リスクが高まっている。米政府は、2026年度の予算案を作成しておらず、9月末までにつなぎ予算が成立しなければ、政府機関が一部閉鎖になる。政府機関が閉鎖になった場合には、職員の解雇通知を出すように各省庁に求めている。政府職員の大量解雇となれば、政府の運営に重大な支障をきたし、かなりの混乱は避けられない。
以上

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