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市況レポート「テディベアのマーケットアイ」10月20日号
好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。
※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

⒈金融経済情勢
米国の信用リスクへの懸念
米自動車部品メーカー、ファースト・ブランズ・グループなどが9月に立て続けに経営破綻したことを受けて、投資信託のように売買されている代表的な融資ファンドの株価が下落していて、いわゆるローンファンドの代表銘柄の一つのゴールドマン・BDCは高値から15%下げた。ブラックストーンのファンドも13%安い。ブラックストーンの株価も高値から17%も下げている。信用リスクに市場が過剰反応しているというよりも、重大な信用イベントが進行している恐れがある。問題はプライベートクレジットファンドだけではない。世界全体で約2000兆円まで拡大したプライベートエクィティーの分野でも、金利の上昇局面が続く中で、投資先の売却や投資家への利益還元で困難な局面に直面している。米国には、マクドナルドの14000店よりPEファンドが多いと言われるなど異常な事態で、今後の展開の中で優勝劣敗が鮮明になるのは間違いない。IMFの4月のレポートで、借り手のほぼ半数が利払いができないために、利払い分を元本に加算したり、返済の期間延長など資金の再編成など借り手のストレスが高まっていることが指摘されている。これらが固有の問題にとどまれば市場への影響は限定的だが、空前の金余りの下で金融機関の審査が甘く、今後も破綻が相次ぐようだと、シャドーバンキング全体の問題に波及するような事態になり金融市場には大きな打撃を与えることになる。
日銀の金融政策と為替相場
ベッセント財務長官は、米国内外の主要メディアを財務省に招いて質疑応答に応じ、ドル円相場について「日銀が適切に金融政策を運営し続ければ、円相場も適正な水準に落ち着くだろうと」指摘し、暗に日銀に対して早期の金利の正常化を促した。加藤財務相とも会談し、為替レートについては市場において決定されることを確認した。植田総裁は16日、ワシントンで会見し、10月29〜30日に開く金融政策決定会合での判断について、「会合時点の情報やデータをまとめて議論して決定する」と述べ、全体としては慎重ながらも以前よりはやや利上げに前向きな印象を受けた。米国は緩やかなドル高の是正を望んでいおり、今後、高市首相になって円安が進んだ時の対応について、加藤財務大臣と意見交換した可能性がある。
高市新政権への期待で為替相場は153円台まで円安が進んだが、アベノミックスの時とは取り巻く環境がかなり変わってきている。現在は、デフレ回帰リスクよりもスタグフレーションに陥るリスクの方が意識される。政府内でも、円高誘導こそが財政負担なく実施できる物価対策で、それを促す為の利上げを行う必要性について理解されている。貿易収支が赤字であることを踏まえれば一目瞭然といえる。利上げによるコストの増加は、インフレの定着で価格転嫁を進めることで十分吸収できる。高市政権になっても、年内利上げの可能性は高いと思われる。
⒉マーケット動向
高市政権への期待を織り込んだ日本株日本維新の会では自民党との政策協議が合意した場合、閣外協力に留めるべきだとの意見が強まっている。維新は議員定数の削減や企業・団体献金の禁止といった政治改革を訴えていて、仮に自民党が受け入れても、高市総裁が首相に就いて新政権が発足した後、実施が先送りされることを懸念している。要求した政策の進捗状況を見た上で連立に加わるか判断すべきだという意見が多くなっている。維新が閣外協力になると、高市新政権の政権運営の難易度は高くなる。野党は企業・団体献金禁止法案の提出のタイミングを伺っており、臨時国会でどこまで法案審議をスムーズに進められるか注目される。株価は高市新政権の政策への期待をかなり織り込んだ水準に達しており、一旦調整した後、しばらくは揉み合う展開を予想する。下値目処としては、トピックスで3000ポイント前後を予想している。
自民党がポピュリズム政党に対抗することは難しく、却って彼らの政策を追認することになりかねない。利益誘導型の自民党政治は、既に配分できるパイが限られた段階で十分機能していない。立憲民主の安全保障やエネルギーなどの非現実的な政策も20代、30代の国民の支持は得られていない。ポピュリズムには、専門性の高く高度な政策で対抗する以外に方法はない。高市政権の発足はまだ第一幕に過ぎないと思われる。国民の政治への関心が高まる中で、戦後の政治体制を抜本的に再構築する動きが強まっている。デフレからインフレへの転換で、中長期的には日本の株価は上昇すると予想しているが、米国のベッセント財政長官が指摘しているように、日銀の引き締めが遅れてインフレが加速し、将来、大幅な利上げを余儀なくされ世界的に金融市場が混乱することが最大のリスクと考えている。
リスクが意識され始めた米国株
米国では今週ハイテク株の決算発表が本格化する。株式市場の支援材料として期待される一方、期待値がすでに高まっていて、株価の一段の上昇のハードルはかなり高い。政府機関の閉鎖が長期化しており、景気への悪影響を警戒する動きが強まりつつある。28-29日に開催されるFOMCで0.25%の利下げが予想されているが、利下げ自体はすでに株価に織り込まれていて、徐々に市場の関心は利下げから、ハイテク企業の膨大なAI投資の採算性や、地銀やファンドの信用リスクに移りつつある。ハーバードのエコノミストのジェイソン・ファーマンの試算によると、2025年前半の成長は、データセンターや、情報通信関連の投資によるもので、これらのテクノロジー産業を除くと0.1%の成長にとどまったという。
オープンAIは約200兆円の大規模なデータセンター投資を計画しているが、赤字経営が続いていて、とても自社で賄える規模ではなく、エヌビディアなどの半導体各社から自社製品の購入資金の提供を受ける「ベンダーファイナンス」という手法を利用する。AIインフラは投資規模が桁違いに大きく、このような循環投資で、売り手と買い手が相互に依存し、万一1社が崩れた時には共倒れになるリスクが高まっている。GPUの開発サイクルはわずか1年単位と短く、短期間で購入したGPUの価値が下落すると大きな損失リスクを抱えることになる。
今後のハイテクの決算発表後の市場の反応次第では、AI関連株が急落するリスクがある。
以上

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