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市況レポート「テディベアのマーケットアイ」10月27日号
好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。
※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

⒈金融経済情勢 ※次号は11月10日の予定です。
米国経済の現状
ADP雇用統計(9月)の民間雇用者数は前月比3.2万人減少し、雇用の増勢鈍化が鮮明になっている。新車販売は7〜9月140万台程度と2024年の平均を上回る推移が継続していて、関税による生産・販売の国内回帰が進展している一方で、サブプライム層の自動車ローンの延滞率は過去最高を更新するなど、所得階層で明暗が分かれている。企業部門への関税の影響は比較的浅いが長く続いて顕在化してくると思われ、7割の企業が今後値上げを行う方針を示しているが、時期は分散されていて急激なインフレが生じるリスクは低い。失業率は緩やかに上昇していて、FRBは景気の悪化を避けるため来年にかけて3%程度まで利下げを行う見込み。
トランプ政権は政権発足以降、合計8.7兆ドルに昇る投資計画を獲得していて、全ての投資が実現しないまでも、投資拡大で米国経済を下支えする効果が期待できる。一方で、移民流入の鈍化や経済安全保障のコストの高まり、財政拡張によりインフレが生じやすい状況で、期待インフレ率は上昇しており、中立金利は3.25〜3.5%とコロナ前より高水準になっている可能性が高い。トランプ政権はFRBに対しあからさまに利下げを求めている。GDP比6%に達する財政赤字を抱え、債務の実質的な価値を抑え込むため、インフレや財政抑圧に頼ることが懸念される。
表面化するシャドーバンキング問題
この10年間で米国のプライベートクレジットの運用資産残高は3倍に拡大したが、その間銀行はノンバンクへの貸出残高は1.2兆ドルに拡大した。これらの非預金金融機関は投資家の資本で融資を行うが、それだけでなく銀行からの借入でレバレッジをかける。理論上は銀行にとってより安全で、損失は優先して非預金金融機関が引き上げるので、破綻しない限り銀行には損失は及ばない仕組みになっている。問題は貸出の担保の対象がそもそも存在しないケースや他の複数の貸し手に同時に担保を提供しているケースで、銀行による融資の内容や担保の実在性を自ら確認する力が弱くなっている。
金融当局や市場関係者が潜在的なリスクとして、警戒するのは生命保険会社の運用資産で、米国の保険株価指数は銀行株指数同様冴えない動きをしている。プライベートクレジットは北米の保険会社の投資額の約3分の1を占めていると言われている。生命保険会社の保有するプライベートクレジットはほとんどがトリプルB格以上の格付けを得ているが、全米保険監督協会のデータによると格付けする機関は中堅の会社が多く、IMFは、保険会社による投資適格級を得るための格付け会社のショッピングが横行している可能性を指摘している。プライベートクレジットが生保のバランスシートにどのようなダメージを与えるかはまだ見通せないが、一度リスクが顕現化すると実態が見えないだけに市場が混乱する恐れがある。日本の保険会社も米国の再保険会社を通じて投資していて、全く関係がないとは言えない。
⒉マーケット動向
⑴日本
株式市場
株式市場は今後、政策の実効を見極める段階に入る。株価の上昇トレンドは続くという見
方は多いが、これから発表が本格化する4〜9月期決算で企業業績の伸び悩みが明らかに
なるにつれて、株価は調整する可能性が高い。米国株の下落をきっかけに大きく下げる場
面も想定されるが、下げは一時的で限定的と見ている。金融機関は現在、含み損を抱えた
債券の処理を進めるための原資を確保するため、株式の売却を進めていると思われ、金融
機関も含め投資家の下値での購入意欲は強い。
長期的に日本株の上昇トレンドは続くと予想する。企業統治改革は始まったばかりで、時
間をかけて進んでいくことは間違いない。高市政権の成長戦略も生産性を高め、潜在成長
力を引き上げること効果が期待される。株価上昇を支えているのは緩やかなインフレで、こ
れが維持される限り株価の上昇は続くと思われる。
債券市場
国内債券市場では、財務相に片山さつき氏が就いたのを受けて国債を買う動きが強まっ
た。野放図な財政出動路線は回避される可能性が高まったという見方が多い。ただし、今後
実施が予想される、ガソリン減税や診療報酬の引き上げ、防衛費の増額、高校無償化の財
源の目処は立っていない。給付つき税額控除についても制度設計はこれからで、財政拡張
のリスクは消えていない。債券市場では拡張的な財政政策への懸念が薄れたことで安心感
が広がっているが、今後、来年度の予算編成が本格化するにつれて、10年国債で1.8%ま
で上昇する可能性がある。
為替は目先は円安、中長期では円高
為替市場では日本の低金利などの構造的な円安要因は続くとの見方が多いが、高市政
権の政策が確実に実行されていけば、いずれ1ドル=120円台まで円高が進む可能性があ
る。
⑵米国
株式市場
米国株は9月の消費者物価が市場予想を下回りFRBが来週の会合で利下げを決めると
の見方が強まり、ダウ平均株価は最高値を更新し、終値で初めて4万7000ドル台に乗せ
た。ナスダック指数も約2週間ぶりに最高値をつけ23204.867で取引を終えた。
今のAIを中心とした株価の上昇がバブルかどうかいろいろな見方が示されているが、そも
そもそういう議論がなされること自体警戒しなければならない。非上場企業であるオープンA
Iの株価が5000億ドルの価値があるか。データ分析サービスのパランティアの予想PERが
200倍なのは合理的なのか。投資家は、これらの企業が将来莫大な利益を上げるという前
提に立っているが、かなり勇敢な賭けに思える。巨大なテクノロジー企業は乗り遅れまいと
半導体やデータセンターへ多額の投資を行っているが、投資に見合うだけのリターンがあげ
られる確信は持てない。株式市場は、現状の水準から高いリターンをあげることは困難で、
株価は米国の安定的なファンダメンタルズは織り込み済みで、それが最大のリスクになって
いる。企業業績やインフレの動向などがわずかでも失望する内容だと、株価は大きく調整す
ることになる。これからは、長期的な事業の持続可能性に確信の持てない企業や、ベータ値
の高い企業への投資は控えたほうがいいと思われる。
以上

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