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市況レポート「テディベアのマーケットアイ」11月17日号
好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。
※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

⒈金融経済情勢日本経済
○17日に2025年7月から9月期のGDPの速報値が発表される。自動車を中心に輸出が落ち込み、6四半期ぶりのマイナス成長に転じる見通し。
2025年度の企業の設備投資計画は前年同期比11%増と高い伸びを維持し経済成長を支えている。個人消費はプラスが続くが伸びは鈍く、賃金の伸びが物価の上昇に追いつかない状況が続くが、インフレ率は来年にかけて低下が予想され、これにより実質賃金は今後上昇に転じる。来年度も高めの賃上げが行われることで、個人消費はプラス圏を維持できると予想している。株高もあって、消費者心理は改善傾向で10月の消費者態度指数は3ヶ月連続で上昇し、基調判断も引き上げられた。引き続き設備投資や個人消費を牽引役に内需主導の成長が期待される。
○高市政権の政策はインフレ圧力が強まる可能性が高い。診療介護報酬の引き上げの意向を示しているが、これがトレンドとして定着すると、基調的な物価を押し上げる。労働力不足など供給不足が指摘され、需要不足とは言いがたい状況で、供給力を上回る需要が喚起されれば、インフレ圧力が強まる公算が大きい。防衛や宇宙、量子コンピュータなどは供給力の向上には役に立たない。基調的な物価高を考慮すると、日銀は年明けにも利上げを実施し、それ以降も、金融正常化路線を維持すると予想する。経済対策の規模については、財務省は17兆円台にする以降で調整している。補正予算の歳出規模は14兆円程度で、減税を含めると17兆円を超える。財政投融資を含めると20兆円を超える見込みで、市場の期待と財政のバランスを取った。
○FRB高官が追加利下げに慎重な見方を示し、米債券市場で金利が上昇した影響が波及し、14日の国内債券市場で10年国債利回りは1.705%と17年ぶりの高さまで上昇した。高市政権の積極財政による財政支出拡大懸念も債券の売り圧力になった。12月の日銀金融策決定会合で利上げに動く可能性も意識され、1.8%を目指す展開が予想される。足元では超長期債の利回りが急騰している。インフレが進んでいる中で、財源の議論が誰からもされていない。こうした状況下で投資家が超長期債を購入する意識を持てるかと言うと、疑問を感じざるを得ない。ただし、日本は経常黒字が続いていて、財政への信頼を支えている。その結果、2%を超えるような極端な金利上昇にはつながらないと予想している。
失速するトランプ政権への支持
トランプ政権にとって、ニューヨーク市長選より、4年ぶりに知事の座を民主党に奪われたバージニア知事選のダメージの方が大きい。無党派層が今回は一転して民主党候補に投票したことが勝敗を分けた。米国は無党派が4割で、選挙の結果を左右するが、足元では無党派層の支持率が46%から33%に急低下した。無党派層の支持率が悪化するのは生活コストの改善が進まないことがある。家賃や病院サービス費などが上昇し、個人破産も増加し体感的な治安も悪化するなど苦戦が目立つ。無党派層を意識して、一部の食料品の相互関税を撤廃や、合法移民の受け入れを認めるなど、現実路線に回帰を図ろうとすると、岩盤支持層の離反につながるジレンマに直面する。GDPの数字は良好に見えるが中身は脆弱で、投資はAI分野を除くと非常に弱く、今後予想される景気の減速は通常より深刻なものになる。おそらく積極的に利下げをしても労働者は増えず、消費の拡大は見込めず需要も拡大しない。トランプ政権への逆風は政権が転換点にあり、中間選挙に向けてトランプ大統領の権力が弱まりつつあることを示している。
⒉市場動向米国AIバブル崩壊のリスク
先週は米国でハイテク株が下落した。政府機関閉鎖解除が決まり、市場の関心は景気の先行きに向かい、FRBによる追加値下げ観測の後退が響いた。米国株式市場では、ビッグテック株のバリエーションの高さを懸念する投資家が、利益確定売りに動いた。
IT関連投資のGDP比率は2025年7〜9月期で⒋4%と2000年代全般におけるITバブルのピーク時に匹敵する。現在の巨額投資が採算が取れるかどうかは、今後数年間のAI市場の成長性に依存する。S&P500に占めるITセクターの比率は過去のバブル期並みに上昇し、需要拡大の見込みが外れれば、過剰投資となるリスクが蓄積している。
AIバブル崩壊で最も懸念されるのは株価の下落に伴う逆資産効果で、当時より金融資産が大幅に増加しており、影響はITバブル期よりも大きくなると思われる。ただしリーマンショックのような金融危機に発展するリスクは、今のところ低い。プライベートクレジットのIT業界向けの割合は高いものの、銀行との財務面での連携は小さく、金融システムへの波及は限定的なものにとどまる。ただし、中期的には、徐々に金融システムが蝕まれ、静かな金融危機へ発展する恐れがあるとみている。AIバブルが崩壊するケースでは、株価は20%から30%下落すると予想している。日本のAIや半導体関連は大きなダメージを被るが、全体的に影響は限定的なものにとどまる。ただし、リーマンショックのような金融危機に発展した時には、経済への影響は深刻で、株価は40%から50%下落すると思われる。
日本市場
○14日の東京株式市場は日経平均が大幅に反落した。業績が期待を上回っても売られるなど珍しい展開となった。タイミングとしては、自民党総裁選後の株価調整局面入りと米株のAI需要の逆回転のリスクが重なる可能性がある。ただし、今回の決算は、来期の2桁増益に対して市場が確信の持てる内容になっていて、TOPIXの予想PERは来期ベースで15倍後半まで下がっており、米国のハイテク株に逆風が吹き始めている事は気になるものの、TOPIX指数が大きく崩れるシナリオは回避できると思われる。
○片山財務相の発言から、当局の牽制姿勢はまだ強くなっていないと受け止められ、対ドルの円相場は、9ヶ月ぶりに1ドル155円に下落した。現在の為替市場は、財政拡張と通貨価値の下落がテーマになっており、日本の実質低金利が続くとの連想から、海外投機筋のドル買い円売りの持高が積み上がっている。為替の動きと日米金利差の乖離などファンダメンタルズに逆行する動きが見られ、当局の介入への思惑が交錯し、動きが荒くなっている。ドル売り介入には米国の理解や了承を得るのが普通で、問題は米国が円安防止には、日銀の金利引き上げが先と言う意向を示唆していることで、介入の前に、まず利上げが必要になる。円安は、輸入物価に圧力をかけるため、円安がさらに進むと、利上げに慎重な高市政権も、結果として利上げをせざるを得なくなる展開が予想される。
短期的にはドル円は158円を目指すが、来年にかけては、145円前後で落ち着くと見ている。トランプ政権は、FRBにあからさまに金融緩和圧力をかけ、独立性を侵害し、また大規模な所得減税の恒久化により公的債務を膨らませるなど、ドルの信用を著しく毀損している。今後、米国は想定以上のインフレや金利上昇に直面し、ドルが大幅に安くなるリスクもある。
以上

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