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市況レポート「テディベアのマーケットアイ」11月25日号

好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。

※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

⒈金融経済情勢                         ※次号は12月8日の予定です日米経済の課題
・日米経済において、最も注意すべきは、公的債務の重さで、政府は景気や雇用の維持のため債務を積み上げてきた結果、利払い費が増加し財政を圧迫している。労働供給の制約も注意すべきで、人手不足による賃上げ圧力がインフレ高止まり要因になっている。格差拡大も、貧困層及び低所得者層に強い政治的な反応を引き起こし、その不満は選挙に際し噴出し、減税や所得移転など財政の拡大を後押しする。日米の経済は粘り強さを保っており、過度な景気後退は見込まれていないが、金利急騰を通じて、財政運営にブレーキがかかるリスクに注意が必要である。財政の持続性に疑念が生じると、タームプレミアムが上ぶれし、通貨安、長期金利上昇・債券価格急落が同時に進むことになる。日本では、高市政権が単年度の財政均衡や長期的な財政目標の達成を断念したと受け止められ、円安が進行し、長期金利が大幅に上昇した。米国でも、支持率の低下を気にしたトランプ大統領が、一人当たり2000ドル、総額6000億ドルの給付を表明するなど、財政赤字のさらなる拡大が懸念されている。

高市政権の政策
・高市政権の経済政策は、責任ある積極財政を挙げたにもかかわらず、発表された内容は、緊急性よりも規模を優先した印象が強い。2025年補正予算案は、一般会計の歳出で17.7兆円とリーマンショック後や東日本大震災を上回る規模となった。物価高対策が政策の目玉の一つになっているが、対策は却って物価の上昇を助長しかねない内容になっている。消費者物価は3年半にわたり、政府日銀が目標とする前年比3%を上回っている。人手不足や供給不足、円安による輸入物価の上昇によるもので、今回の物価対策では効果はあまり期待できない。物価高対応は、本来日銀に委ねるべきもので、制約のある財政は、所得制限を設けた所得支援策に絞るべきである。プライマリーバランスの黒字化を柔軟化したのは問題で、規律なき財政支出の拡大が懸念され、海外の投資家の日本国債売りが加速した。高市政権の金融緩和圧力を意識して物価上昇率がインフレ目標を大幅に上回っているにもかかわらず日銀は利上げに消極的で、為替市場では日銀の信認が問われ、円安が正当化されている。

⒉マーケット動向

日銀の金融政策の重要性
世界の金融市場は、日本の超低金利と巨額の量的緩和に依存してきた。日銀の金融正常化は、流動性の状況に影響与える。日本が今まで供給してきた流動性によって、欧米の国債利回りが適正な水準よりも低く抑え込まれてきた。円安を食い止めるためには為替介入を伴うが、米国債の売りは、ドルの流動性を引き締める。また、円安による日本の長期国債利回りが急騰すると、その結果、国内機関投資家は、資金を海外に投資するインセンティブがなくなる。高市政権の拡張的な財政政策と金融緩和策は円安を刺激する。ベッセント財務長官は、日銀の対応が遅れ、円安が加速し結果として利上げや介入が大幅になり、世界の流動性の流れを逆転させて世界的な金融システムへの資金供給が滞る事態を恐れている。

日本市場
・日経平均は、AI関連の将来の収益性への不安や、米金利下げの不透明感から最高値か
ら7%下落した。AI関連の株価の調整は進んできており、また、日本企業の業績は予想以上
に好調で、米金利の引き下げの確度が高まれば、日本株も上昇すると言う見方もあるが、
相場の回復には更なる値幅調整か日柄調整が必要になる。そもそもAI関連のビジネスの将
来性はもともと現時点で判断するのは難しい。米国のビッグテックの株については、買いた
い投資家より割高だと思う投資家が多ければさらに下落する余地がある。米国債券市場の
関心は年内に公表されるパウエル議長の後任に移っていて、より緩和的な政策が求められ
ると言う見方が多く、インフレ予想が切り上がると見られている。債券市場の動向によって
は、米株が下落し、日本株も連動して下げるのは避けられない。
・株安、円安、債券安を受けて、今後、政府は今までの消極的なスタンスを変更すると予想
している。円安の進行に対し、積極的な為替介入を行い、日銀に対しても経済成長と物価安
定の両立を目指して金融政策を行うという考え方を改めて確認すると思われる。海外投資
家は円安や長期金利の上昇を懸念しており、本格的な株価の上昇には、強力な為替介入
による円安修正とともに日銀の明確な政策の変更が必要不可欠である。
・債券市場において、当面金利の上昇は1.8%前後で落ち着くと見ている。ただし、政府の
単年度の財政均衡の柔軟化は、海外投資家には長期的な財政目標の達成を断念したと受
け止められている。また、政府は少数与党であるため、財政支出の拡大を避けにくい状況に
ある。インフレや金融の正常化に対する政府日銀の政策方針が明確になるまでは、金利上
昇圧力は継続すると思われる。
米国市場
・米国市場のリスク要因としては、⑴大規模AI投資が本当に高い収益をもたらすのか⑵関
税の合憲性をめぐる最高裁判所の判断の行方⑶FRB議長の後任⑷FRBの利下げ、が挙
げられる。
大規模AI投資については、GDPの成長の3割を占め、米国の成長を牽引しているが、どれ
だけ今後高い収益が見込めるかは現時点では予測できない。少なくとも、電源調達面が
ネックになりつつある。生成AI活用の広がりが注目されていて、期待から実装へ円滑に進む
かが、米景気の先行きについて重要なポイントになる。
関税の合憲性については、最高裁は年内にも判断を下す見通しだが、合憲性が認められ
ないという予測が多い。最高裁が政権に不利な判決を出した場合の市場の反応は、株安、
ドル安、債券安になると思われる。
年内に公表されるFRB議長の後任は、より緩和的な政策を進めるとの見方が強い。米国
の景気は若干減速しているものの、悪化しているわけではない状況で、大幅な利下げの思
惑が強まると、市場のインフレ期待が切り上がり、株、債券、通貨のトリプル安が起きると言
う悲観シナリオを意識しておく必要がある。
・先週の米国の株式市場は、厳しい1週間で、最も懸念すべきは、株価を押し上げる好材料
が数多くあったにもかかわらず下落した点である。エヌビディアの決算も好調であったが、3.
2%下落した。単にニュースをきっかけに、売り手の意欲が買い手を上回った結果に過ぎな
い。押し目買いを狙う投資家の買いと吹き値売りを狙う弱気派のせめぎ合いは、しばらく続
きそうで、株式市場はギリギリのところで踏みとどまっている。12月のFOMCで0.25%利下
げが期待されているが、たとえ利下げがあっても、大きな効果は期待できないと思われる。
                                         以上

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