News
お知らせ
市況レポート「テディベアのマーケットアイ」12月15日号
好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。
※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

⒈金融経済情勢米欧の金融政策
各国の中央銀行の金融政策の方向がまちまちなものになっている。FRBは利下げ方向で、日銀は利上げで、ECBは様子見の姿勢を強めている。
FRBは10日のFOMCで、予想通りに0.25%の追加利下げを決めた。パウエル議長は記者会見で、政策金利は中立金利の推計範囲に入ったとして、追加利下げに含みを持たせながら、今後の政策判断は会合ごとに行う姿勢を打ち出した。今後はインフレリスクを警戒しながら、当面は追加利下げを打ち止めにするかもしれない。
ECBのシュナーベル理事は8日、すぐではないにしても次の政策変更は利上げになる可能性の方が高い、と発言して世界の債券市場を驚かせた。ECBとして長期的な中立金利の上昇を見据え、政策金利を適切な水準に維持する必要があるというもので注目を集めた。ニューヨーク連銀のモデルでは、ユーロ圏の実質中立金利が0.2%にあると算出している。この状態が続けば、ECBの2%の政策金利は維持される可能性があるとしているが、ユーロ圏の実質中立金利が0.2%にあると言う推計値は、新型コロナウィル禍直前の半分であり、2年前の推計値の4分の1に過ぎない。今後の中立金利が23年の水準に戻り、インフレ率が2%で推移した場合には、ECBの政策金利は80ベーシスの追加緩和をもたらすことになり、シュナーベル氏が指摘した行き過ぎた金融緩和になる。ドイツの景気刺激策の影響や、ウクライナでの戦闘が終結する可能性を考えると、あらゆる可能性に備えておく必要がある。
多くの銀行が発表している見通しを見ると、世界的に金利水準が上昇する可能性に触れているケースはない。最近の日本やオーストラリアの金融政策の転換やECB理事の発言など、投資家は中央銀行による金融の引き締めリスクを真剣に聞いておくべきことを示唆している。
日銀の金融政策
日銀は今月の政策決定会合で0.25%の利上げを行うとともに、これで終わりではないと言う姿勢を示すと思われる。日銀の推計に基づけば、現在の中立金利は1〜2.5%に分布している。今回の会合では、利上げを継続するスタンスを強調し、1%が上限でないことを市場に浸透させることになる。少数与党の立場では、国民のアフォーダビリティーへの不満に対応するため、積極財政を行うのは避けられず、却って物価の上昇リスクを高める悪循環に陥ることになりかねない。今一番重要なのは円安対策で、為替や金融市場に対し明確なメッセージを出す必要がある。高市政権のもとでは日銀は利上げしにくく、さらなる緩和が求められるのではないかと言う市場の思惑が、今の円安の主な要因になっている。
⒉マーケット
日本市場
短期的に日本株は調整局面を迎える可能性が高い。日本株の上昇を支えてきた世界的なハイテク株の上昇に翳りが見られる。日本株は、米国株への一極集中からのローテーションの流れの中で買われてきたが、日銀の金融政策の正常化が再開されると、期待値だけではこれ以上の株価の上昇は難しくなる。中長期的には、既にかなりの加熱感のある米国株よりも、持続的な賃上げサイクルが定着し、適度なインフレが経済に根付きつつある日本株の方が上昇が期待できる。インフレへの対応は日銀に任せ、金融正常化や為替水準の適正を図り、インフレを加速させない対策が求められる。
債券市場の混乱が続いている。10年国債2%は、通過点に過ぎないという意見もあって、投資家は動きにくい状況が続いている。たしかに消費者物価の上昇率が2%後半の状況では長期金利は低すぎる。来年度の予算編成に向けて財政支出の拡大が見込まれ、引き続き長期金利には上昇圧力がかかりやすいが、本格的な潜在成長率の上昇が見られない限り、10年国債利回りが2%を超えて大きく上昇するとは考えにくい。一方で、米国景気の減速や株価が下落すると、債券利回りは大きく低下する可能性が高い。
米国
コロナ禍以降の上昇相場は、大規模な財政や金融緩和に大きく依存してきた。依然として世界に溢れるマネーがリスク資産を下支えし、生成AIへの期待は強く、企業の投資も継続している。巨額投資の加速は、短期的に成長を押し上げるが、供給能力の増強が進むつれて、将来の設備過剰や市況調整のリスクを織り込む展開になる。米国家計は、金融資産に占める株式投資の比率が既に過去最高にあり、追加の株式積み増し余力は限定的で、バリュエーションを押し上げる力は弱まっている。ドル需要や資金流入は細ってきており、米国一辺倒の潮目は明らかに変わり始めている。
ここ数年にわたる株価上昇の過程で、投資資金が大型テック株に集中し、バブルを示す動きも見られ、こうした加熱は調整は避けられないと思われる。別のシナリオとして中間選挙へ向けて、減税や現金給付などの財政支出や利下げなどあらゆる政策手段が動員されることにより、バブルが加速する展開になるという予測もある。
パウエル議長の後任の議長は、トランプ氏の言うことに耳を傾け、積極的に利下げを行うと見られる。もちろん利下げは消費を促し、米経済に活力を与え、それが企業利益を増やし、株価を押し上げるが、そのためにはFRBが、政治から独立した存在であることが前提になる。FRBへの信認が失われると、株価の乱高下や債券利回りの上昇、ドルの急落など予見できない結果を引き起こす恐れが高まる。
FRBによる0.25%の利下げが行われたにもかかわらず、債券利回りが上昇していることは気になる動きで、債券市場は、年後半へ向けてインフレの加速や財政支出の拡大を警戒している可能性がある。
シャドーバンクの問題もほころびが表面化しつつある。バロンズによると、主要な8社のPE企業とオルタナ運用会社の合計時価総額は、約4920億ドル、運用資産総額は4兆6700億ドル、オルタナティブ運用会社が支配するプライベートクレジット市場の時価は1兆5000億ドルまで膨らんでいるという。最近のPEファンドは、膨大な負債を抱え、十分なEXIT件数を確保できていない。機関投資家は、S&P500のインデックスファンドにパフォーマンスで劣っていることに気づいている。最近は、PEファンドは個人投資家をターゲットにしている。シャドーバンクのトラブルなど、タイミングはいつかわからないが、市場に深刻な影響を及ぼす問題が発生する恐れがあるので留意したい。
以上

私たちは、資産運用ビジネスを支援しています。
お問い合わせはこちら