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市況レポート「テディベアのマーケットアイ」7月7日号

好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。

※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

⒈金融経済情勢

米国で大型減税・歳出法案が成立
大型減税の景気押し上げ効果はGDPベースで0.1%〜0.5%と限定的で、財政への悪影響の方が深刻で、財政赤字が今後10年間で3.4兆ドルと試算されている。新法には債務上限の引き上げも含まれており、当初は抑え気味でもいずれ国債が大量に発行されることになる。発行は中短期債が中心になるが、財政赤字はインフレ押し上げ要因で、長期金利を押し上げる。FRBの金融政策
3日発表された米国の6月の雇用統計は、非農業部門の雇用者が14万7000人増加と市場の予想を上回ったことを好感して、ニューヨークの株式市場は大幅に上昇した。ただ、増加のほぼ半分は政府部門によるもので、民間セクターの伸びは大幅に鈍化した。失業率は4.1%に低下したが、これも13万人が離脱したことが一因と見られている。平均賃金も0.2%の上昇と5月から減速した。長期失業者も増加していて全般に雇用が引き続き減速していることを示している。
米国経済は、一部の脆弱な領域では、高い借り入れコストやインフレ圧力に晒されているが、資産価格の上昇で潤う富裕層の支えもあって全般には堅調を維持している。9月には消費者物価の上昇率が3%を超えると予想されていて、FRBはトランプ大統領の関税政策のインフレへの影響を見極めるため利下げを見送っている。ただ、実質金利は歴史的にみて非常に高い水準にあり、ベージュブックでも、景気や政策の不確実性が高く、経済活動がわずかに鈍化したと指摘している。市場では、9月の利下げが確実視されている。

日銀の金融政策
日銀は、利上げ維持の姿勢を示しているが、関税の影響を考慮して早期の利上げには慎重なスタンスで、市場参加者の政策金利の引き上げ回数の予想も、年内1回以下になっている。6月発表された短観をみると予想以上に製造業全体の業況は改善している。国内のインフレの着実な進行が支店長会議や展望レポートで確認されると、トランプ政権の大幅な相互関税の適用が回避されることが前提になるが、9月利上げの可能性が高まると思われる。ドル負債の大幅な増加
BISによると為替スワップを使ったドル調達がファンド、銀行や保険会社などに広がり2024年末には約1.4京円に達しているという。最大の利用者は投資ファンドなどのノンバンクと言われていて、規制が及びにくく情報開示も不十分で、金融監督当局も十分実体を把握できていない恐れがある。今後、世界的に景気が悪化した時には、信用収縮が起こり、資金の出し手が消えて流動性が急速に逼迫する恐れがある。金融当局が精緻な実態を把握できていないだけに、どの地域でどの程度ドルが不足するかが予想しにくいことが最大のリスクになる。FRBの有事のドル供給にも不安が残る。

2.マーケット動向

米国市場の今後の展開
S&P指数が4月に安値をつけたあと、3ヶ月で20%以上急上昇したのは4シグマ現象と言われている。利下げや大型減税により企業収益のさらなる拡大が可能となったという見方が予想PERを18倍から22倍に押し上げた。
ここからの動きは見方が分かれている。巨大IT企業の急速な利益成長でさらに30%と上昇するという強気予測があるが、景気拡大局面の末期に急激に上昇する時は、多くのケースはバブルであることが多く、市場はその後下落する。
関税に伴うインフレの悪化が利下げを遅らせ、景気を悪化させる可能性がある。財政赤字の拡大によって国債利回りが上昇し、米国経済全般の借入コストを増加させる。米国10年国債利回りが4.5%を上回るかどうかがポイントになる。S&P指数の割高さもネックになって下落しやすい。
どちらのパスになるかはFRBの利下げのタイミング次第になる。早いタイミングで利下げが行われれば、株価は大きく上昇する。但し、その後はインフレの悪化による引き締めで大きく下げる。利下げが遅れると一度大きく下げたあとは揉み合う展開になる。

日本市場
海外投資家による日本株買いが株価を押し上げ日経平均は一時4万円台を回復した。関税問題の解決は恐らく参議院選挙後に持ち越されたと思われ、当面は選挙や米国株式市場次第になる。自公が負けて、財政支出の拡大に積極的な政権運営が行われる可能性が高まると、長期金利の上昇を嫌気した海外投資家の売りで株価が下落する可能性が高い。関税の悪影響は、個別の自動車会社の株価には織り込まれたが、自動車産業は裾野が広く経済全般への影響はまだ織り込まれていない。
今後の投資に際しては、1%までの政策金利の引き上げや、為替の円安修正なども含めた金融正常化を前提に組み立てることになる。少子高齢化の中で企業が生産性を高め成長するには、積極的な設備投資に加え、合併や買収に大胆に取り組む必要がある。金融市場の正常化はそのために最低限解決しておくべき重要課題になる。これらがクリアされると、内外の投資家の長期投資が増加する。
日本10年国債の1.5%は、適性水準と思われる。積極財政派が首相に選ばれると、国債利回りは大きく上昇するリスクはあるが、上昇は一時的なものにとどまると思われる。
為替は140円がクリティカルサポートになっている。ユーロ高円安がドル円の相場にどう影響を与えるか予測しにくい。関税問題が決着した後に、トランプ政権の為替のスタンスが見えてくると思われる。

                                          以上

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