News

お知らせ

市況レポート「テディベアのマーケットアイ」11月10日号

好評をいただいている、弊社代表・野田隆の市況分析「テディーベアのマーケットアイ」。
ウェブサイトでは、先週の「マーケットアイ」よりトップコラムのみを転載しています。お取引のある皆さまへは、市場動向についてのコラムと併せてお届けしています。購読をご希望の方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。

※このレポートは投資家に参考になる経済・市場環境に関する情報を目的としたもので、特定の有価証券の投資を推奨したり、投資勧誘したりすることを目的としたものではありません。また、このレポートは弊社が信頼できると考えられる情報に基づき、独自にこれを分析した見解であり、レポート作成時の執筆者の意見を正確に反映しますが、その内容を保証するものではありません。

⒈金融経済情勢

高市政策と金融市場
高市政権の経済政策は、人工知能やバイオなど17の戦略分野を中心に、大胆な減税と複数年の予算措置で民間の設備投資を促し、サプライチェーンの強化を図ることに重点をおいている。現在のようなインフレ・円安の時にアベノミクスと同じことを実行することは危険であり、インフレや円安が加速し逆効果になる。高市政権が日銀に金融緩和の維持を強く求めるという思惑から、為替は日米の長期の金利差に比べて10円以上円安になっている。防衛国債や教育国債など財政拡張的な政策が行われると、リスクプレミアムが上昇し国債の金利は上昇し、景気にマイナスに作用する。

日銀の金融政策
日銀は10月の金融政策決定会合で追加利上げを見送ったが、植田総裁は、利上げに向けて布石を着実に打っている。会見後の記者会見で、来年度の賃上げについて春闘の全体でなく、初動のモメンタムを確認したいと述べ、また見送りの主な理由としてきた米経済について下方リスクはやや低下したと述べるなど、利上げ実施に向けて前進しているとの考えを示唆した。利上げが市場に十分織り込まれていれば、市場の混乱なく利上げを実施できるので、12月18〜19日の次回会合に向けて講演や記者会見を通じて利上げに向けた準備を重ねると思われる。

米国経済
米国経済は、一部のハイパースケールの成長に支えられている。消費は堅調といっても、ビッグテック株の値上がりで潤う富裕層の消費が中心で、ミシガン大学の11月の消費者信頼感指数は3年半ぶりの低水準に落ち込み、消費者心理の低下は国民全体に広がるなど、景気の実態はかなりいびつで脆弱になっている。米国の最大のリスクは労働市場の減速で、株式や債券が労働市場のニュースに敏感に反応している。それでも2026年にかけて、景気が減速してもリセッションには陥らないという見方が大勢を占めている。労働市場の悪化が加速するのを防ぐため、FRBが利下げを継続するという前提が楽観的な見方の背景になっている。

米国のプライベートクレジット
約250兆円まで拡大したプライベートクレジットへ市場の関心が高まっている。高金利が借り手企業の財務を逼迫し、利払いを続けることが困難になりつつある企業が増えていると言われている。プライベートクレジットの問題は、資産の価値が明確でないことで、正確なバリエーションを誰も知らないため、価格情報が広がらず、リスクは低いという誤った認識を与えている。パブリック市場で取引されているローン債権を、パブリック市場よりはるかに高く評価するファンドが多いという。
本当に恐ろしいのは、評価価格の差ではない。プライベートクレジットがリスクの高いビジネスへの融資であるにもかかわらず、それが資産価値において適正に評価されていないことである。問題がいつ表面化するかわからないが、表面化した時には金融システム不安につながる可能性が高い。

⒉マーケット動向

日本市場
日本株は半導体関連や防衛関連の株を中心に大幅に上昇した。10月、海外投資家は日本株を3兆4413億円買い越し、日経平均株価が5万円に乗せる原動力になった。日経平均のドル建は3割近く上昇と、S&Pの2倍近く上昇した。足元では海外勢の買いは減少していて、AI関連の高値警戒感が広がっている。特にAIや半導体株が大幅に上昇した日経平均株価は割高で、個別の目標株価を積み上げたボトムアップ予想値を大幅に逆転するなど、買われ過ぎの水準に達している。11日にSBGの決算が発表されるが、オープンAIの価値を先取りしており、既にディスカウント幅は大幅に縮小していて、上値は限定的と思われる。高市政権の政策の効果が表れるのは来年以降で、当面は米国市場の動向に左右されやすい不安定な展開で、月末にかけて株式市場は大きく調整する可能性が高い。日経平均株価の下値は45000〜46000円、トピックスは3000〜3100が下値の目処になる。その後は年末にかけてトピックスや東証グロース株が上昇する展開になると予想する。
債券市場は利回りが上昇するとみている。ガソリン減税や防衛費の増額、高校無償化、診療報酬の引き上げなど歳入の目処のたたない支出が目白押しで、10年国債利回りは来春にかけて、一時的に2%まで上昇すると予想している。ただし、米国株の下落や米国景気の減速があれば、10年国債が1.5%を下回る水準まで低下する可能性がある。為替は、12月のFRBの利下げと日銀の利上げを意識した動きになり、当面は145〜155円の範囲で推移すると予想している。AIバブルの崩壊のようなショックが万一起きた時は、ITバブル崩壊の時のように資本が分散に向かいドルは大幅に下落する。ITバブル期、ドルは40%値下がりしたが、同じような動きになる可能性には注意が必要である。


インフレ下の金融機関の運用
インフレ下では資産と負債が変動するので、金融機関の運用はALMの一環として運用することがポイントで、特に債券の運用が重要になる。流動性に優れた債券は貸出代替、流動性準備、景気悪化時の償却原資と様々な役割を担う。含み損を抱えた債券を優先的に処理し、株式とバランスよく組み合わせた運用で確実に収益を積み上げることが求められる。

米国市場
ナスダックは週間で3%下落、4月の関税ショック時の10%下落以来の下げになった。7〜9月期の設備投資の拡大が不安視され、ハイパースケールの下げが目立った。投資家の買いポジションの行き過ぎが原因で、今週の下落は加熱気味のAI銘柄主導の上昇が止まり、市場に冷静さが戻ってきたとみておいた方がいいかもしれない。19日にエヌビディアの決算が発表されるが、発表内容よりも発表後の株価の動きに注目している。懸案事項になっている政府機関閉鎖については、イースター休暇までには解決すると予想されていて、閉鎖が解消されれば株は一旦反発すると思われるが、米国景気は、ハイパースケールの業績や設備投資に過度に依存しており、市場関係者が予想する以上に米国経済の体質は脆弱になっている。AIやハイパースケールの業績が期待に届かず、株価が下落した時には、株価の下落が連鎖しないか、よく確認する必要がある。
                                           以上

この記事をシェアする

私たちは、資産運用ビジネスを支援しています。

お問い合わせはこちら